2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Experiences of End-of-life Cancer Patients in Modern Society
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19K13915
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
歸山 亜紀 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (50767358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん患者 / 闘病ブログ / 終末期 / 計量テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、「新しい終末期」における患者の経験(病・死に対する思い、日々の過ごし方等)を明らかにすることを目的としている。自らの回復が見込めないことを知ったとき、患者の個人誌(伝記)は断絶(biographical abruption)され、実存的ショックを引き起こす。そして、患者のその後の生(新しい終末期)のためには、生きるヴィジョンや自分の役割の再構築が必要となる。 2021年度はおもにがん患者本人による闘病ブログを対象に、標準治療では回復が望めないことを患者が知った場面に着目し、質的分析および計量的分析をおこなった。 質的な分析からは、標準治療では回復が望めないことを多くは医師から直接的には伝えられておらず、医学的診断(腹膜播種等)から患者自ら理解し、その確認を患者主導のコミュニケーションによって行っているということがわかった。この現実をポジティブにとらえることも可能であるが、こうした医師のコミュニケーションのありかたは患者任せであり、患者の生への配慮というよりは、その場を切り抜けるためのスキルにとどまっているように思われる。また、このとき患者の病状や身体状況の悪さが、回復が望めないという悪い知らせを受け止めるレディネスとなっていることを明らかにした。 計量的な分析からわかったことは多くはないが、死にゆく過程においてはQOLを確保するための身体的痛みのコントロールが不可欠であること、時間経過とともに死への覚悟がみられるようになることが明らかになった。ただし、この覚悟は医療者、家族、社会が要求する「『望ましい』死の積極的な受容」や「ホスピス患者らしさ」といったイメージとは異なるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度には闘病ブログの分析を進めつつ、データアーカイブを利用してインタビューデータの電子データ化を行うことを計画していた。2つの目標を計画通りに進行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は最終年度であるので、これまでに闘病ブログのテキストデータおよびインタビューデータ(2次分析)の収集・整理を終えているので、これらを使って「書かれた私」と「語られた私」の違いにも注目した分析を行う。
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Causes of Carryover |
2021年度2月にデータ利用申請し、支出を予定していたデータ使用料の支払いが2022年度はじめになったことが大きい。2022年度5月に支払う予定となっており、次年度繰り越しとなった研究費の執行に問題はない。
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Research Products
(2 results)