2019 Fiscal Year Research-status Report
On Non-Anthropocentric Approach: Actor-Network-Theory and Others
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19K13924
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
栗原 亘 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (80801779)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクターネットワーク理論 / 脱・人間中心的アプローチ / B. ラトゥールの / H. コリンズ / サイエンス・スタディーズ / 知のポリティクス / 異種混成性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、アクターネットワーク理論(ANT)関連の基本文献およびその周辺の議論に関する資料の収集・検討をおこなった。 ANT関連の文献に関しては、成立・展開期から現在に至るものを収集した。また、ANT周辺の領域の資料についても収集した。ANTの出発点となったサイエンス・スタディーズ内外の、ANTと直接的に関係する議論に関する資料はもちろんのこと、人間以外の諸要素に着目する他の諸議論に関する資料も広く収集した。 資料の検討は主として以下の3つの観点からおこなった。ANTの成立期・展開期において、①ANTの主唱者たちがいかなる議論を展開していたのか、②ANTとサイエンス・スタディーズ内の他の立場との関係はいかなるものであったのか、そして、③人文社会科学領域において、人間以外の諸要素を積極的に扱うANT以外の議論にはどのようなものがあったのか、という観点からである。これらの検討を通して、ANT内の議論の展開と、ANTをめぐる様々な立場の相互関係を把握した。 以上のとくに②の検討作業をおこなうなかでは、ANTと、ANTの脱・人間中心的アプローチに批判的な議論との関係についても集中的に検討した。本研究プロジェクトでは、脱・人間中心的アプローチに対する批判的な見解を検討することも重要な課題としているからである。この課題に取り組むために、とくにANTを代表するB. ラトゥールの議論と、脱・人間中心的なアプローチを批判し、あくまでも人間の「知」に焦点を合わせた研究をおこなっているH. コリンズの議論との比較検討もおこなった。そうすることを通して、脱・人間中心的アプローチのなかに、人間の「知」の位相を付け加えていく方途について検討した。 以上の成果として、博士学位請求論文1本およびANT関連書籍へ寄稿する原稿4本を、2020年度内の完成・公刊に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年に予定されていた資料の収集および検討に関しては、おおむね順調に完了した。成果物については、①博士学位請求論文、②ANT関連書籍へ寄稿する4本の原稿を、現在完成・公刊に向けて準備中である。いずれに関しても、2019年度の段階で原稿自体はほぼ完成した。①については主査に提出のうえ、細部の詰めをおこなう段階、②に関しては出版が決定し、他の著者との間で調整をおこなう段階に至っている。ただ、いずれも2019年度中の完成・公刊を目指していたが、現状、2020年度中の完成・公刊となる見込みである。以上から、本研究は、やや遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、当初の予定通り、アクターネットワーク理論とその他の脱・人間中心的アプローチを採用する諸議論との相互関係を詳細に検討していく。ただ、当初は、かなり広範な領域の脱・人間中心的アプローチを視野に入れていく予定であったが、資料収集・および検討の過程において、焦点を1つの領域に絞った方がより有益な成果が期待できるとの結論に至った。というのも、いずれの領域においても、想定以上に多様な脱・人間中心的アプローチが乱立している状況にあり、これらを網羅的に扱おうとすることは、得られる知見の質の低下につながる可能性があるからである。 そこで、2020年度には、とくに昨今関心が高まっており、さらにANT内でも活発に議論されている「エコロジー」の領域に焦点を合わせていくことにする。「エコロジー」の領域のなかだけでも、すでに多種多様な脱・人間中心的アプローチが乱立している状況にある。そこで、本研究では、ANTを1つの軸として、「エコロジー」という主題のもとで乱立している脱・人間中心的アプローチの相互関係を整理したうえで、それらを有機的に連携させていく方途を探っていく。 以上を通して、脱・人間中心的アプローチを、人文社会科学のなかでより有意義な仕方で展開させていくためには何が必要なのかについて検討・評価するという、本研究の最終的な目的の達成を目指していく。 なお、研究成果の公表に関しては、学会報告および学会誌への論文投稿によっておこなう予定である。
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Causes of Carryover |
資料収集・整理作業について、当初学生アルバイトなどを雇用する予定であったが、該当者が見つからず、研究代表者が自らおこなったため。また、資料購入費・印刷費が、当初想定していたよりも少なくて済んだためである。 2020年度は、学会での報告や学会誌への投稿をおこなう予定であるため、その経費(印刷費、旅費等)として支出する。また、2020年度に扱う予定の領域は、2019年度に扱った領域よりも、全体的に資料の単価が高いことが予想されるため、引き続き資料購入費・印刷費として計上する予定である。
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