2019 Fiscal Year Research-status Report
運動部における「女子マネージャー」の抑圧経験に関する社会学的研究
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19K13927
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
関 めぐみ 京都光華女子大学, 公私立大学の部局等, 助教 (20793045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | IE / エスノグラフィー / 女子マネージャー / セクシュアル・ハラスメント / Dorothy E. Smith |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、女子マネージャーの活動内容(仕事)と意識についての「語り」をもとに、社会学研究の新しい方法論であるInstitutional Ethnography(IE)を用いて、女子マネージャー制度における制度的な性差別の存在と女子マネージャーがセクシュアル・ハラスメントを甘受しやすい要因について明らかにすることにある。2019年度の成果は、以下の通りである。 1.「支える仕事」概念の検討:IEで用いられている「仕事」概念を整理するため、文献調査を行った。この成果は、次の論文にまとめた。 ・関めぐみ(2020)「『女子マネージャー』の社会学」『体育の科学』70(3):209-213. この論文では、マネージャーの活動を「スポーツを支える仕事」として位置づけることで、性に基づく抑圧経験だけでなく、まだ発見されていない多様な抑圧経験を可視化できることを指摘した。 2.IE研究者との意見交換:日本ではIEを用いた社会学的研究は行われていないため、海外の研究者から情報を得た。IEを提唱したDorothy E. SmithとともにIEのワークショップを行っているSusan Marie Turner博士、そして、Smith氏がトロント大学で教鞭をとった際の最初の教え子であり、現在もSmith氏と定期的な研究会を開催している上田洋子博士である。上田氏とはSmith氏が2005年に出版した、IEの基礎となる本“Institutional Ethnography: A Sociology for People”の翻訳を進めており、2020年度に出版予定である。 3.先進的な研究についての調査:「ジェンダーとスポーツ学会」に参加し、情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、主に海外の研究動向調査と「支える仕事」概念の検討を計画していた。夏にはSmith氏が主催するIEのワークショップに参加し、研究動向を調査する予定であった。しかし、研究代表者の妊娠期間が重なったため、開催地であるカナダへの渡航・滞在は困難となった。また、2月からは産前・産後休業を取得し、研究活動を一時停止している。 そのため、計画を変更し、主に文献調査と意見交換を実施した。論文執筆については、当初予定にはなかったが、文献調査の結果の一区切りとして発表可能と判断した。これは、計画を変更したからこその成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究再開後は、大学のアメリカンフットボール部にてフォーカスグループインタビューを実施する予定であった。また、その成果を国際学会発表をする予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行のなか、実施が困難となる可能性がある。そのため、引き続き文献調査を進めるとともに、対面のグループ調査ではなく、オンラインでのインタビュー調査に変更することも検討する。
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Causes of Carryover |
2019年度はSmith氏が主催するIEのワークショップに参加し、研究動向を調査する予定であった。しかし、研究代表者の妊娠期間が重なったため、開催地であるカナダへの渡航・滞在は困難となった。また、2月からは産前・産後休業を取得し、研究活動を一時停止している。そのため、次年度使用額が生じた。 計画変更に伴い、文献調査のウエイトが重くなるため文献の購入に使用する。また、オンラインでの調査を実施するにあたり、必要な機材をそろえる予定である。
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