2019 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原子力発電所事故報道の言説構造と送り手の意識
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19K13928
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
矢内 真理子 同志社大学, 学習支援・教育開発センター, 助教 (10822760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言説分析 / 福島第一原子力発電所事故 / 報道 / メディア論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、災害情報学会の『災害情報』に「女性週刊誌は福島第一原子力発電所事故をどう報じたか ―読み手と書き手の共感を醸成する言説構造―」が掲載された(査読あり)。 本論文の概要を以下に示す。本論文は女性週刊誌3誌(『女性セブン』『女性自身』『週刊女性』)の2011年3月の原発事故にまつわる報道の言説分析を行い、読者に対して女性週刊誌がどのようなメッセージを読者に発しているのか、何を要請しているのかを検証した。その結果、原発事故は読者の生活に大きな影響を及ぼすものとして表象されていた。その影響に対応するために、被災地に募金をしたり、節電・節約することで家計を守ることが、アドバイスや要請という形を取って語られていた。そして「私たち」という代名詞を使うことや、主語を省略することによって、書き手と読者が一体となるような言説空間が作られていた。本論文は、とくに研究題目の中の週刊誌(雑誌)に着目した研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」とした理由は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、資料収集や調査に差し支えが出ているためである。2019年度進展したことで、上記の論文以外の活動としては、福島原発事故以前も含め、原発に関するメディアにおける言説を調査・分析するべく、資料収集を行った。時期としては2011年以降と並行し、チェルノブイリ原発事故があった1980年代後半から90年代前半にかけての雑誌や漫画、広告における原発の表象や言説に着目し、国立国会図書館、大宅壮一文庫、福島県立図書館などで資料収集を行った。これらの資料を用いて、次年度論文として成果を発表するために準備を進めている。また、新聞(福島民報・福島民友などの地方紙)についても、同様に収集を進めている。これらの資料を通して、これまでの原子力発電に関する価値観が、福島原発事故を通してどのように変容したのかを検討できればと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
20年度は、当初報道従事者への聞き取り調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症のこともあり、この書面を書いている現在も収束しておらず、予定を大幅に変更せざるを得ない状況になっている。テレビ通話や書面での回答も考えられるが、極力実際に会って話を聞ければと考えている。よって、20年度は特に雑誌・新聞の紙面・誌面分析を進めることを目標とする。紙面・誌面の収集については、すでに手元にある資料のほか、オンライン上での資料請求が可能な図書館(大宅壮一文庫など)を利用し、継続する。 また、福島県の報道従事者を招き、本研究テーマに関係する講演会を開催するため企画を立てている。2021年3月で事故が発生して10年が経過することになるが、3.11で役立てられたメディアがその後どんな活躍をしているか、メディア論の観点から報告してもらうことを計画している。この会がアウトリーチの機会となればと考え、準備を進めている。実施時期は2020年度の秋学期以降を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定していた2020年2月・3月の出張ができなくなったことから、2019年度の予算を20年度に繰り越さざるを得なくなった。今年度の使途としては、特にオンライン上で収集した資料の印刷にまつわる費用(用紙代、インク代、ファイル代、印刷代、送料等)や、縮刷版など資料の購入費用等が挙げられる。さらに今後の社会的な状況によっては、資料収集や聞き取り調査を目的とした出張ができればと考えている。ただし、計画の実行に制限がかかる可能性はある。
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