2020 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原子力発電所事故報道の言説構造と送り手の意識
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19K13928
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
矢内 真理子 同志社大学, 学習支援・教育開発センター, 助教 (10822760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言説分析 / 福島第一原子力発電所事故 / 報道 / メディア論 |
Outline of Annual Research Achievements |
【論文】下記の学会発表をもとに執筆した論文を2020年12月に1本投稿し、現在査読審査中である。内容は以下を参照。 【学会発表】日本マス・コミュニケーション学会2020年度秋季研究発表会(2020年10月10日、オンライン)で口頭発表を行った。タイトルは「署名記事からみる 福島原発事故報道―『毎日新聞』を事例に―」である。本研究は、毎日新聞の記事の署名を手掛かりに、地方版(福島面)と東京本社版の、地震発生から1週間を対象に、福島支局の記者らがどのような足取りで取材を行ったのか、彼らが書いた記事が地方版・東京本社版にどれくらい用いられていたのかを検証した。その結果、福島支局の記者たちは主に地震・津波の被害に関する報道に従事しており、福島県にいたとしても、ただちに原発の情報を得ているとは限らないことが明らかとなった。本研究は、特に研究題目の中の、新聞に着目した研究である。本研究に関連して、2020年6月から9月にかけて、毎日新聞社の記者2人に聞き取り調査を実施した。 【その他の活動】他にも論文以外の活動としては、地元ジャーナリストの協力を得て、2020年9月に福島第一原発とその周辺(南相馬市、富岡町、双葉町、大熊町、飯舘村など)の被災地で視察を行った。同時に福島県いわき市のローカル紙を発行するいわき民報社を訪問し、夕刊紙「いわき民報」の紙面収集を行った。他にも、いわき市立図書館で、「福島民報」「福島民友」をはじめ、原発事故関連の資料収集を行った。 現在、「いわき民報」の2011年3月の記事目録を作成すると同時に、記事分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症のために緊急事態宣言が出されるなど、生活様式が大きく変わった状態が1年以上続いている。本来ならば、『毎日新聞』福島支局の当時の記者たちや、『いわき民報』の記者たちへの聞き取り調査を検討していたが、県をまたいでの移動が大きく制限されるなど、当初予定していた計画を変更せざるを得ない状況が続いている。一方で、目録作成や記事分析は、作業を進められた。他にも、資料(福島県内の新聞など)を収集することを継続している。今年度はこの2年間で継続して分析してきたことをひとまとめにできるよう計画している。 今年度の予定としては、『いわき民報』についての研究成果を報告するため、2021年6月の日本マス・コミュニケーション学会での口頭発表に申込み、発表が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
当面、対面での聞き取り調査の実施が困難なため、オンライン上での聞き取り調査ができないか検討している。2021年度は、6月に実施される日本マス・コミュニケーション学会で口頭発表を行い、そこでのフィードバックをもとに『いわき民報』に関する論文をまとめ、『マス・コミュニケーション研究』に投稿できればと考えている。 さらに、『朝日新聞』『読売新聞』の事故当時の地方面・東京本社版を対象に、地方の支社による報道がどれくらい行われたのかを検証し、秋の日本マス・コミュニケーション学会で研究発表ができればと考えている。 最終的には、ローカル紙、地方紙、全国紙の地方版、全国紙の4つの媒体における原発事故報道を比較できればと考えている。研究成果は、随時学会で報告するとともに、学会誌にも論文投稿する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症が収束せずに1年が経過し、当初予定していた2020年度の出張ができなかったために、予算を繰り越さざるを得なくなった。今年度は、資料の収集にかかわる費用(送料、手数料、印刷代など)、縮刷版などの購入費用が予定されている。また、講演会(オンライン)を検討中のため、講師の謝礼も費用として必要になってくる。社会状況が許せば、2019・2020年度でできなかった現地調査および聞き取り調査(当時の『毎日新聞』福島支局の記者、『いわき民報』の当時の記者)ができればと考えている。
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