2022 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原子力発電所事故報道の言説構造と送り手の意識
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19K13928
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
矢内 真理子 同志社大学, 学習支援・教育開発センター, 助教 (10822760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 言説分析 / 福島第一原子力発電所事故 / 報道 / メディア論 / 新聞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、妊娠・出産のため6月から10月にかけて、研究を中断せざるを得なかった。これらの期間以外にも、研究中断前は妊娠中の体調の問題があり、研究再開後も産後の体調回復につとめる必要があったため、こうした状況から2022年度は学会発表や論文の投稿を見合わせざるを得なかった。 以上の事情により、研究活動の遂行に大幅な制約が生じたものの、可能な範囲で2022年度は、2023年度の論文投稿・学会発表に向けて、資料収集および資料の読み込みを行った。対象は、雑誌『寺門興隆』(興山舎、宗教界からみた原発事故をとらえるため)、雑誌『月刊タクティクス』(有限会社タクティクス、福島県のローカル情報誌)、週刊誌『FRIDAY』、『週刊ポスト』、新聞『福島民報』、『福島民友』などである。 また、並行してこれまでの研究を整理し、必要な修正を行った。2021年度までの間に発表した研究成果から、本テーマの核心となる部分が見えてきたと考えている。それは、これまでメディア論や報道従事者の認識において常識であった、地元メディアであれば、その地域で最も早く、かつ詳細な取材・報道ができるに違いない、という認識が、福島第一原発事故においては通じなかったという点である。一方で、これまでの原発事故報道の検証研究は、先述のような在京メディアと地域メディアのつながり、関係性について問うたものは、原発事故から10年が過ぎ、様々な研究成果が公表されているものの多くはなく、その意味でもメディア論において、本研究は一定の意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」に記載のとおり、妊娠・出産に伴う研究の中断期間が発生したことから、達成度・進捗状況が「やや遅れている」と判断した。なお「産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴う補助事業期間延長」を日本学術振興会に申請し、受理された。そのため2023年度まで研究期間が延長された。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、同志社大学人文科学研究所の嘱託研究員(社外)として、本研究を引き続き遂行する予定である。 具体的には、第一に2021年度に学会発表を行った『いわき民報』、『福島民友』『福島民報』を主題とする研究の成果を論文化する。投稿先は『メディア研究(旧マス・コミュニケーション研究)』(日本メディア学会、旧日本マス・コミュニケーション学会)、『評論・社会科学』(同志社大学社会学会)、『社会科学』(同志社大学人文科学研究所)を予定している。 第二にこれまでに記事分析を終了した新聞・雑誌に加えて、2022年度に入手した新たな新聞・雑誌(「研究実績の概要」に記載したものに加えて縮刷版を入手した『茨城新聞』、『東奥日報』『上毛新聞』『山形新聞』など)及び『朝日新聞』『読売新聞』の事故当時の地方面・東京本社版の紙面・誌面の分析結果を学会(日本メディア学会、災害情報学会など)や研究会(人文科学研究所部門研究会など)で口頭発表する。最終的に、ローカル紙、地方紙、全国紙の地方版、全国紙の4つの媒体における原発事故報道を比較検討した上で結論を導き出す予定である。 第三に震災当時報道に従事していた関係者への聞き取り調査を実施する。過年度の研究計画でも報道従事者への聞き取り調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響及び妊娠・出産の影響で実施を見送っていた。しかし2023年度に入り、政府の対策方針が大きく変更されたこと、また産後の体調も回復傾向にあるため、聞き取り調査が実施可能な環境が整ったと判断する。時間の都合上、未実施の調査を全て実施することは困難であるため、優先順位をつけた上で実施する。なお現在0歳児の子どもを養育中であるため、遠方への移動を伴う聞き取り調査は実施が困難であるものの、コロナ禍で普及したオンラインツールを利用することで調査実施は十分に可能と考える。
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Causes of Carryover |
既に「現在までの達成度」の項目などで述べたとおり、2022年度に妊娠・出産に伴う研究の中断が発生したことから、当初計画していた研究費の支出が発生しなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 研究費の使途については、2022年度に実施予定だった出張(資料収集及び学会・研究会報告)、聞き取り調査に係る経費(主に旅費、文献複写費、謝礼)が中心となるが、今年度に入り新たに刊行された関連図書や資料の購入も予定している。
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