2019 Fiscal Year Research-status Report
Social reproduction and the limitations: inclusion and exclusion of social movements in Japan
Project/Area Number |
19K13929
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
富永 京子 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70750008)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 社会運動 / ライフスタイル / 対抗文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は本研究において、現代日本における、社会運動従事者の関係性や規範意識が、社会運動の凝集性を高めると同時に閉鎖性を高め、ときに他者の排除へと繋がることを明らかにしてきた。近年はデモや集会のみならず、生活の諸行為を通じた若者の政治活動を対象に研究してきたが、こうした活動もまた、むしろ社会運動の中で規範への強いこだわりやライフスタイルの徹底化といった組織文化を形成し、社会運動コミュニティの持続性を高めるとともに参加者の排除や序列化に結びつく点が明らかになった。 2019年度は立命館大学学外研究員制度を利用し、ウィーンをはじめとしたドイツ語圏のアクティヴィストプレイス(オキュパイハウジング、スクウォットプレイス)を通じた余暇活動や学習活動、食住を通じた政治的営為とデモなどのイベントを調査してきた。若年層を中心としたアクティヴィストの人々とコミュニケーションが可能になったが、聞き取りの結果、こんにちの社会運動の組織文化を検討する上で、特に1960-70年代に培われた、ライフスタイルを通じて形成された対抗文化が重要な変数となっているのではないかと着想した。 具体的には、1960年代-70年代前半において、学生運動をはじめとした若者対抗文化の担い手であった人々が、その後、社会運動や政治、対抗文化を形成し、どのように継承されたかが、消費社会との関係性、言論、ライフスタイルを通じた政治という点で、社会運動の組織文化を直接間接的に作り上げていると考えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、社会運動コミュニティにおいて凝集性が高まり閉鎖性・排外性が生じる過程を分析するとともに、対抗文化がどのように継承されたのかを検討している。2019年は調査と分析の結果をもとに、査読論文として国際誌論文一報を投稿、国内誌論文一報の刊行が決定している。また、依頼論文二報も刊行決定ずみであるため、アウトプットとしては順調であると考えられる。 2020年度も継続してフィールドワークの成果を論文化しつつ、2019年度より新たに始めた対抗文化の継承的側面に関する調査結果について、対抗文化と消費文化の関連から検討した研究を蓄積したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、現在投稿中の論文の査読プロセスにおける議論を活かし、新たに二報の論文を作成、国際会議・国内学会でブラッシュアップすることで、四本の査読論文を投稿することを目的とする。主には、観光研究の視野からおこなった研究、メディア論分野における研究(二報を予定)、日本研究としての貢献を目指した研究である。 調査としては、日本のアクティヴィスト・プレイスに関する聞き取りを行うことを予定していたが、新型コロナウイルスの流行の影響で困難なことから、資料を用いた1960-70年代の対抗文化についての分析を先に行い、そこで判明した対抗文化の継承に関する知見を用いつつ、2021年度に再度フィールドワークに復帰する可能性も視野に入れている。
|
Causes of Carryover |
主に研究・調査を行っていた研究拠点がオーストリア・ウィーンであったため、国外学会への参加や調査にかかる渡航費が想定をはるかに下回ったことから。この研究費は、2020年度の資料購入費・研究協力者謝金にあてたい。
|
Research Products
(7 results)