2019 Fiscal Year Research-status Report
Practice and effectiveness of the Manchester Homelessness Charter and associated pledge systems
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19K13935
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河西 奈緒 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (20817522)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホームレス / 憲章 / プレッジ / マンチェスター / パートナーシップ / コ・プロダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は大きく2つの研究成果を得た。第一に、本研究の「英国マンチェスターのホームレス憲章とプレッジシステムを核とした問題解決の取り組みを明らかにし、同モデルの有効性を検証する」目的に対応して、20年冬に10日間の現地調査を行った。現地調査では、前年度に行った予備調査と合わせ延べ13団体22名の関係者へのインタビュー調査、政策の意思決定を担うパートナーシップ組織が開催するシンポジウムや会合への参加、支援団体活動の現地見学を行い、憲章の成立過程に大きな影響を与えた当時の社会的背景や出来事、キープレイヤーを把握した。結果、マンチェスターにおける全市的な問題解決アプローチは、ホームレス経験者や支援者、行政職員、コミュニティ組織らが等しい発言権を持ち、同じテーブルにつく「co-production(共創)」の原則的価値によって推進されていることが明らかとなった。 研究成果の第二は、本研究の「東京の関係者にマンチェスターの画期的な問題解決モデルを共有し、これを東京で応用する際の課題を検討、導入に向けた提案を行う」目的に対応して、19年夏に8日間にわたり東京都内で一連の企画を実施した。マンチェスターのホームレス政策及び支援、当事者活動の関係者9名を迎え、シンポジウム(70名規模)とワークショップ(75名規模)を開催し、都内の主要なホームレス支援団体や社会起業支援組織の計7団体を訪問した。これらを通じ、同市のホームレス問題解決モデルや多様な主体間で共有されている理念・価値を東京の複数分野の関係者に紹介した。東京では都市全体の共有方針を持ち、多様な主体を巻き込むための団体間パートナーシップがほとんど築かれていないという課題や、一方で各団体は支援を行っている地域の住民やクリニック、不動産、商店等とゆるやかな協力関係を築いているという地域資源の可能性が見出だされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は10日間の現地調査を実施し、研究課題遂行にあたって質量ともに必要なデータを収集することができた。また、夏期にマンチェスターの関係者9名が来日する機会に恵まれ、当初計画では3年目に位置づけていた東京の関係者への事例報告と意見交換の第1回目を十分な規模で実施することができた。 一方、上記のとおり東京の関係者との協議及びそのための準備を繰り上げて行ったため、当初予定していた研究成果のとりまとめ作業がやや遅れており、これについては引き続き次年度に行っていく。 以上を総合し、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初年度に行った現地調査で得られた結果について、2020年度の前半に整理・分析を進め、マンチェスターのホームレス憲章および全市的パートナーシップの形成過程を主な内容とした学術論文を学会へ投稿する。同年度の後半には、憲章に付随するプレッジシステムの運用状況やプレッジを行っている主体及びプレッジの内容について、必要に応じた補足調査を行い、プレッジシステムの有効性を検証する。その際、初年度の調査より明らかとなった、本市特有の原則的価値「co-production(共創)」とプレッジシステムの関係性についても分析・考察を行う。 最終年度は、2年目の研究結果を学術論文にまとめると共に、東京都内でシンポジウムや検討会等の機会を設け、研究成果の報告と東京への応用の可能性について、マンチェスターの関係者も招聘し協議を行う。東京における協議の結果は、マンチェスターのホームレス・パートナーシップやその他の調査協力者にもフィードバックし、研究課題終了後も両都市の関係者間の知恵の交換や協力関係の継続を図る。
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Causes of Carryover |
欧州におけるCOVID-19の感染拡大状況を受け、現地調査の期間を当初予定の3分の2に短縮したことが、次年度使用額が生じた主な理由である。上記の理由によって生じた研究費については、次年度の補足調査(海外現地調査を予定、ただしCOVID-19の状況による)に用いる。マンチェスターのプレッジシステムに参画している企業や大学などの多様なプレイヤーについて、参画の動機や実際のコミットメントの内容を把握する。また、英国内他都市への憲章やプレッジシステム、市民参加アプローチの波及状況についても調査を行う。
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Research Products
(1 results)