2020 Fiscal Year Research-status Report
Practice and effectiveness of the Manchester Homelessness Charter and associated pledge systems
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19K13935
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河西 奈緒 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員 (20817522)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ホームレス / 憲章 / プレッジ / マンチェスター / パートナーシップ / コ・プロダクション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の後半は研究中断期間であったため、以下では年度前半の研究実績を報告する。 本年度は、「英国マンチェスターのホームレス憲章とプレッジシステムを核とした問題解決の取り組みを明らかにし、同モデルの有効性を検証する」という研究第一の目的に対応した研究活動を行った。具体的には、前年度の終盤に実施した英国マンチェスターでの現地調査で得られた結果について、インタビュー調査の文字起こしと内容の整理・分析を進めた。また、政策の経緯や事業詳細等について、現地で収集した行政資料や公開されている文書を用いた文献資料調査を行い、インタビュー調査で明らかになった内容の制度的背景を把握した。 これらの作業より、マンチェスターにおける全市的な問題解決アプローチの根底には、支援団体らによる草の根の活動の中で育まれてきた「co-production(共創)」の理念があり、それが市内のホームレス人口急増という危機をきっかけとして、政策の立案・実施体制に導入されていったプロセスが明らかとなった。また、この導入プロセスの主要かつ最初の成果物がホームレス憲章であり、実際には憲章を作成していく中でco-productionの理念を具現化した政策実施体制が形作られ、多様なプレイヤーが巻き込まれていき、行政や企業を含めたプレイヤーの間で同理念が共有・理解されていったことが明らかとなった。 以上の研究成果については、現在学術論文の形にまとめている最中であり、学会への投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の前期に予定していた現地調査結果のとりまとめがおおよそ終了し、その成果をまとめた学術論文の執筆途中段階で研究中断期間に入った。このことから、今年度の前期段階までとしては、研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はまず、マンチェスターのホームレス憲章および全市的パートナーシップの 形成過程を主な内容とした学術論文を学会へ投稿する。また、21年度から22年度にかけて、憲章に付随するプレッジシステムの運用状況やプレッジを行っている主体及びプレッジの内容について、必要に応じた補足調査を行い、プレッジシステムの有効性を検証する。その際、本市特有の「co-production(共創)」理念とプレッジシステムの関係性についても分析・考察を行う。 最終年度は、上記の研究結果を学術論文にまとめると共に、東京都内でシンポジウムや検討会等の機会を設け、研究成果の報告と東京への応用の可能性について、マンチェスターの関係者も招聘し協議を行う。東京における協議の結果は、マンチェスターのホームレス・パートナーシップやその他の調査協力者にもフィードバックし、研究課題終了後も両都市の関係者間の知恵の交換や協力関係の継続を図る。
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Causes of Carryover |
出産・育児に伴い、年度の途中で研究中断の手続きをとったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。繰り越された研究費については、次年度の補足調査(海外現地調査を計画している。ただしCOVID-19の状況による)に用いる。マンチェスターのプレッジシステムに参画している企業や大学などの多様なプレイヤーについて、参画の動機や実際のコミットメントの内容を把握する。また、英国内他都市への憲章やプレッジシステム、市民参加アプローチの波及状況についても調査を行う。
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