2020 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者向け住宅の虐待に関する基礎的研究
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19K13945
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
松本 望 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (10758668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 高齢者虐待 / 予防策 / 原因 / 質的調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,サービス付き高齢者向け住宅(以下,サ高住)における虐待の実態や原因,そして予防策の影響力・効果を明らかにすることである.2020年度は2019年度までに行った文献レビューの結果をまとめるとともに,サ高住の職員を対象とした質的調査を行った. まず文献レビューに関しては,業界団体による調査も含め回収率が低いこと,運営実態に関する調査が多く,虐待や不適切なケアについてはほとんど調査されていないことが明らかとなり,これらの結果についてまとめた. 質的調査については, COVID-19の感染拡大を受けGoogleフォームを用いた自由記述式のアンケート調査として実施した.調査の内容は主に,①サ高住の虐待リスクの高さ,②虐待の原因,③虐待予防策,④回答者の基本属性で構成した.調査は札幌市の全てのサ高住に依頼し,生活相談員などサ高住の業務や運営,ケアについて詳しい,最も中心的な役割を果たす職員を対象とするよう依頼した. 調査の結果,28名の職員から回答が得られた.①サ高住の虐待リスクの高さについては,利用者の要介護度が他の介護施設に比べ低いことなどから,回答者のうち21名がサ高住の虐待リスクは他の介護施設に比べ「低い」と考えていた.②虐待の原因,③虐待予防策については,これまで他の介護施設を対象とした調査研究と同じ内容が多くみられた.ただ,サ高住ならではの虐待予防策として,「利用者とのコミュニケーション」「家族,地域との関わり」なども一部みられた. 以上のことから,サ高住において虐待が発生するリスクは他の介護施設に比べると低いものの,虐待の原因となる要因はサ高住にも存在していることから,予防に向け取り組む必要があるといえる.特に,自立度の高い利用者とのコミュニケーションや地域に向けた実践など,サ高住の特性をいかした取り組みも含め,取り組んでいくことが重要だと考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19の感染拡大に伴い,当初の計画を変更せざるを得ない状況となった.具体的には,2019年度に実施した「文献レビュー」の結果については,2020年度に発表予定だった学会(大会)が中止となり,発表ができなくなったものもあった.また「質的調査」については当初,インタビュー調査の実施を予定していたが,多くのサ高住で感染症対策として家族面会の中止等の措置がとられていたことから,対面でのインタビュー調査の実施が困難となった. そのため,文献レビューに関しては2021年度以降の学会での発表や論文投稿に切り替え,質的調査については実施方法をGoogleフォームを用いた調査に変更し実施するなどした.以上のように当初の計画とは一部,方法等が変更にはなったものの研究全体の進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,2020年度までに行ってきた「研究成果の発表」と,2021年度に当初から実施する予定であった「アンケート調査の実施」の二点に取り組む予定である.「研究成果の発表」については,引き続きCOVID-19の影響により発表予定の学会の中止等の可能性も考えられることから,学会発表から論文投稿への切り替えなど,適宜対応する. 「アンケート調査の実施」については,当初は質問紙を用いて全国のサ高住を対象とした調査の実施を予定していたが,これまで行ってきた文献レビューにより質問紙調査の回収率は低いことが既に明らかとなっている.さらにCOVID-19が流行している時期や地域では,回収率の低下が懸念されるなど,調査方法や対象(地域)について再度,検討する必要がある.例えば,2020年度に行った質的調査で用いたGoogleフォームを用いたアンケート調査も,以前より社会全体で普及していることから,Web調査の実施も視野に検討していく. 調査の内容は,先行研究の調査項目も参考にしつつ,2020年度に実施した質的調査により明らかとなったサ高住ならではの虐待予防策なども質問項目に取り入れ,サ高住のタイプ別に虐待の実態,原因や予防策の影響力・効果を明らかにする.質問項目は主に,①職員・職場の特性,②虐待の原因(職員のストレス,利用者の要介護度),③職員・職場の虐待予防策,④虐待の実態,の大きく4つで構成し,サ高住のタイプ別に効果的な虐待予防策を明らかにすることを目指す. 以上のように,2020年度に引き続きCOVID-19の流行など社会情勢もふまえた上で,柔軟に研究計画や研究方法を見直しながら取り組むこととする.
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い,調査の実施方法など一部の研究計画を変更したため.
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