2021 Fiscal Year Research-status Report
サービス付き高齢者向け住宅の虐待に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19K13945
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
松本 望 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (10758668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サービス付き高齢者向け住宅 / 高齢者虐待 / 予防策 / 質問紙調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,サービス付き高齢者向け住宅(以下,サ高住)における虐待の実態や原因,予防策の影響力等について明らかにすることである.2021年度は前年度までの研究結果について学会発表や論文投稿,介護職員等を対象とした研修の実施に取り組むとともに,質問紙調査(量的調査)を実施した. まず質的調査の研究結果については,他の種別の介護施設を対象とした先行研究との比較検討を行い,サ高住ならではの予防策があることと,他の介護施設と共通するリスクや要因があることを明らかにした.さらに,各住宅によってもリスクや要因が大きく異なる可能性が示唆された. 質問紙調査については,全国のサ高住を対象に実施した.質問項目は「職員や職場の特性」「虐待や不適切なケアの意識」「虐待や不適切なケアの実態」「予防策の実施状況」で構成した.調査期間は2021年12月~2022年2月とした. 調査の結果,944か所の住宅から回答があり(回収率19.9%),そのうち不備のあった回答を除く914部を有効回答とし(有効回答率19.3%)集計・分析を行った.その結果,サ高住においても少なからず虐待や不適切なケアの実態があること,予防策の取り組み状況などが事業所の特性(業種,運営実態)などによっても異なる可能性が示唆された.また自由記述でも,入居者の重度化が進み介護施設化しているといった意見がみられた一方,「自立」の方のみを対象としておりそもそもケアを提供していない,といった意見がみられるなど,サ高住の多様性が改めて浮き彫りとなった.また,利用者や家族のみならず,勤務する職員のサ高住への理解が不足しているといった意見もみられ,母体法人の業種や運営実態に関する回答の一部にも誤りがみられるなど,新たな課題も明らかになった. 今後は,各事業所の特性に応じた予防策の効果や影響力について,詳細な調査・分析を行っていくことが課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までと同様,今年度もCOVID-19の影響により,発表予定だった学会(大会)の実施方法等の変更に伴い,研究成果の発表についてまだ実施できていないものが一部ある.また2021年度に実施した質問紙調査について,配布先住所が掲載されていたデータベースから2021年10月末時点で正しい住所が掲載された住宅,開設後1年以上が経過した住宅のみを絞り込む作業に時間を要したこと,さらに得られた回答の一部にも不備がみられたことから,質問紙の配布,回収後の集計・分析に時間を要し,やや遅れ気味で進んでいる状況である. ただ,調査そのものはすべて終了しており,質問紙調査についても,回収率は高くはないものの,分析に耐え得る回答が得られたことから,2022年度ではこれまでの研究成果,特に質問紙調査の結果についてまとめ,報告書,論文,学会発表等として公開できる見込みである.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は,まず2020年度までに実施した質的調査の結果について整理し,論文投稿,学会発表を引き続き行う予定であり,既に一部は査読も通過している状況である. また2021年度に実施した質問紙調査については,データの確認作業をさらに進め,集計・分析を行い,分析結果は論文・学会発表として公表する予定である.特に,これまでの研究結果から各住宅の特性(運営実態)と虐待や不適切なケアの実態,予防策の実施状況や効果が異なる可能性が考えられることから,各住宅の特性に分けて分析を行う予定である. そのほか,介護職員等を対象とした研修等も引き続き実施する予定であり,研究成果の社会への還元にも積極的に取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
質問紙調査の送付先の件数について,当初予定していた件数よりも少なくなったため,次年度使用額が生じた. 次年度使用額については,職場が変更になるため,研究環境の整備等に費用をあてる予定である.
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Research Products
(2 results)