2021 Fiscal Year Research-status Report
長時間介助サービスを利用する障害者の「生きづらさ」と介助関係に関する研究
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19K13952
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
金 在根 目白大学, 人間学部, 専任講師 (10780504)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重度障害者 / 介助関係 / 自己決定 / 自立生活センター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、長時間介助サービスを要する障害者の介助関係をめぐる実態と課題の検討を通して重度障害者の生活において見え隠れしている「生きづらさ」について一考察を行うものである。具体的には、自立生活運動の鍵概念である「自己決定」に注目しながら、生活の主体である重度障害者と援助の主体である介助者、そしてこの二つの主体間に介入し、調整を行う事業者(ここでは自立生活センター)のそれぞれが、長時間介助サービスを利用している障害者の介助関係をどのように認識し、取り組んでいるのかを調査・分析し、重度障害者の特有の「生きづらさ」について考察を行うものである。 2018年9月に、都内の重度障害者と自立生活センターのコーディネーターで構成された介助関係研究会を発足し、重度障害者の介助関係における問題について議論しつつ、アンケート調査項目を作成した。その後、プレ調査の実施及び修正などを重ね、2021年8月に全国の約120か所の自立生活センターを対象に調査を開始し、2021年12月にデータの収集と分析を終えることが出来た。研究の結果、障害者は介助関係に対して、自己決定が重視される関係より、居心地の良い関係を求めていることが明らかになった。そして、常に介助者という他者と一緒に生活することに対して、「息が詰まる」「気疲れ」などの思いから、一人の時間を設けたいと思っているが、約半数の対象者は諸理由から設けることが難しいことが分かった。次に、介助者は、障害者が自分の人生を充実に過ごすことを期待しており、それが実現されないと自分の存在意義を見出せず、仕事の意欲の低下などにつながることが見られた。最後に、事業者は、障害者の自己決定の度合いに対して懐疑的であり、障害者の意思より介助者の意思の方が強い介助関係も少なからず見られていると指摘している。また、介助関係の改善のために事業所の役割が重要と考えていることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少し予定より遅れるものの、おおむね順調に進んでいると言える。 現在、調査と一次分析は終了し、2月には、調査に協力してくれた全国の障害者団体から30名程度参加してもらい、調査結果の報告と、それを踏まえたシンポジウムを開催した。また、4月には、立教大学社会福祉研究所の研究例会において研究発表を行い、多様な分野の研究者から意見及びコメントを受けることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
調査結果の一次分析とシンポジウムの意見交換、立教大学社会福祉研究所での研究例会の議論などを踏まえて研究成果をまとめ、報告書の作成と、学会発表及び論文の投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
委託業務内容の縮小等により、アンケート調査委託費が最初の予定額より減ったことと、最終年の報告書の印刷と協力団体への郵送の費用が増えることを考え、予算の調整を行った。
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