2019 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉制度を利用した「学びの場」の存在理由と学習実践に関するミクロ分析的研究
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19K13953
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Research Institution | Niigata Seiryou University |
Principal Investigator |
海老田 大五朗 新潟青陵大学, 福祉心理学部, 准教授 (50611604)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 障害者の学ぶ権利 / 学びの場 / 学習のデザイン / 特別支援教育 / 生涯教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度(研究計画書初年度)は、新潟市内の1か所の「学びの場」で3回参与観察を行った。実際に行った授業として、木工家具工房の職人とのコラボにより、木工による芸術作品を授業として2つ作成し、岩室あなぐま芸術祭という障害者芸術祭に出品することができた。この授業のデザインについては記録も残っており、これは本年度の最大の成果の1つである。また、6月には鹿児島のユーススコラ鹿児島の見学を行い、学校法人化構想などの話を伺うことができた。愛知県で8月に開催された全国専攻科(特別ニーズ教育)研究会主催の「実践研修講座・2019」に参加したり、全国専攻科研究会の「第16回 全国専攻科(特別ニーズ教育)研究集会 in なら」に参加するなど、全国の学びの場である「専攻科」との調査協力いただける事業所との関係づくりを行った。 また、具体的な成果としては、『発達・知的障害者の大学教育研究』の第3号に、(書評)「『発達・知的障害者の大学教育研究』第1号・第2号」を掲載することができた。 本書評では、研究誌としての基準をいくつか挙げ、その基準を達成していないために、『発達・知的障害者の大学教育研究』誌は研究誌として、まだこれから発展の余地を残す研究誌であることを指摘した。他方で、授業実践記録などについては充実している。とりわけ障害を持つ学生の生きた声や見晴台学園大学の科目シラバスが多数収録されており、資料的価値はたいへん高いことも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の前半で調査協力者との関係づくりを行い、後半でまとまった調査を計画していたが、世界を席巻した新型コロナウイルス騒動のため、実地調査を行うことができなった。その代替研究として、日本で公刊されている、本研究計画と関係する図書をほとんどすべて収集し終えたので、実地調査を予定していた今年度の2月と3月では、文献研究に終始した。 したがって、当初の研究計画から未達成だったこととして、今年度2月3月に予定してた、まとまった期間の参与観察ができなかったが、今年度の前半でインタビュー調査を1件、参与観察調査を1件できたのは、不幸中の幸いだった。また、文献研究を進める中で、発達・知的障害者の大学教育研究』についての書評機会を与えられたのは、まさに調査協力者関係づくりの成果であり、筆者にとっては僥倖であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画にもとづいて考えれば、今後の研究推進とはすなわち実地調査の推進を指すわけだが、新型コロナウィルスの席巻という全く予想不可能な事態が生じたため、全国の実地調査の推進については暗礁に乗り上げているというのが現実的な見方である。今後実現可能なこととして、文献研究を進める一方で、全国の実地調査を翌年度に繰り越し、3年目に予定していた、中間報告を兼ねたシンポジウムの開催を、4年目に移行させるなど、現実世界の情勢に即した研究計画の変更が推進方策となる。実際、現時点で収集した文献を読む限り、理論的な整理がまだまだなされていない領域だということはわかったので、こうした理論的領域の整理という大きな課題について今年度取り掛かるという方策をとる予定である。
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Causes of Carryover |
2020年2月より発生した新型コロナウイルスの影響により、この2020年2月3月で予定されていた実地調査が中止された。これにより研究計画を文献研究に一本化し、予定よりも多くの文献を収集するにいたった。それでも予定していた予算を使い切ることができなかったが、この残額については今年度ないし翌年度に実地調査をするための旅費にあてる予定である。
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