2019 Fiscal Year Research-status Report

「幼児教育の貧困化」防止・脱却と就学前後の連続的な貧困予防に関する地域比較研究

Research Project

Project/Area Number	19K13966
Research Institution	Ryukoku University Faculty of Junior College
Principal Investigator	中根真龍谷大学短期大学部, こども教育学科, 教授 (00309642)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2023-03-31
Keywords	同和保育／人権保育 / 家庭支援推進保育士 / 保幼小連携 / 同和対策事業
Outline of Annual Research Achievements	2019年度の研究実績は、パイロットスタディの実施と調査仮説の設定の2つである。第1にA県B市C学区に関するパイロットスタディを実施し、C学区における年長児保育、保護者支援、保幼小連携の実態に関する基礎的な調査を行った。具体的にはB市の幼児課、教育委員会、B市立Cこども園、B市立C小学校、B市立D子どもセンター（旧・教育集会所）を訪問し、各関係者と調査協力に関する打ち合わせをはじめ関係資料の確認や収集（一部貸与も含む）、インタビュー調査を実施した。これらの調査によって、同和保育／人権保育や保幼小連携の現状と課題に関する概況を把握したが、部落解放運動や同和対策事業の歴史的な展開と密接不可分であり、その延長線上にあることが明らかになった。第2に調査仮説の設定について、各地域における同和保育／人権保育の展開はそれぞれに歴史的経緯があるものの、就学前後の連続的な貧困予防という視点から、以下の3点を仮説的に考えている。すなわち、①保育施設における年長児保育、保護者支援には児童の基本的生活習慣の確立、保護者の理解と協力を促すさまざまな個別的配慮（クラスだより、家庭訪問など）を行っている可能性があること、②配慮を要する児童や保護者への対応の要は家庭支援推進保育士である可能性が高いこと、③保育施設と小学校とは日常的な関係構築に努めており、児童や保護者に関する情報共有と相互理解の場を設け、必要に応じて関係機関（市役所担当部署、家庭児童相談室、児童相談所など）と緊密に連携している可能性があることである。以上のように、2019年度は2020年度以降実施予定の事例調査のための基礎的な準備を整えた。今後は、文献資料等で仮説の修正を適宜重ねながら調査を推進する。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 2019年度は研究計画調書のとおり、パイロットスタディの実施と調査仮説の設定をほぼ遂行できたと考えている。なお、当初計画していた研究コンサルテーション（人権保育関係、スクールソーシャルワーク関係）は研究経費、研究時間確保の事情から未実施となっており、実施の可能性を継続的に模索したい。
Strategy for Future Research Activity	2020年4月以降のコロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出、外出自粛や移動制限が強く求められる現状のなか、当初計画していた事例調査（E市、F市、G町）の進捗に遅れが出ている。社会的な情勢を見きわめ、無理のない調査の推進に努め、状況によっては事例調査対象数を減じるなど研究目的の遂行を損なわない範囲で柔軟な調整を図る。したがって、当面は収集済みの文献資料の調査を基本に研究を推進する。パイロットスタディの結果をふまえ、収集済みの文献資料を加味し、調査仮説の精度を高める。なお、緊急事態宣言の解除等が行われた際には、できるだけすみやかに事例調査を推進できるよう準備を整える。
Causes of Carryover	旅費について、本務校の研究倫理委員会による審査に時間を要した結果、2019年度はパイロットスタディの実施時期が上半期から下半期に遅延したこと、研究者が学部長任期中であるため、調査時間の確保が難しい現状にあること、以上の理由により交通費の執行が滞った。また、人件費・謝金については、パイロットスタディの調査対象となった関係者がいずれも公務員であり、調査協力に伴う支出がなかったことが未執行の理由である。 2020年度以降も同様の状況が想定されるため、研究開始当初にいったん未実施としていた研究コンサルテーションの実施など本研究の質的向上につながる経費の執行を計画する。