2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者施設における宗教的関わりの実践性と評価に関する研究
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19K13967
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
河村 諒 関西福祉科学大学, 健康福祉学部, 講師 (40578423)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピリチュアルケア / 宗教的な関わり / 利用者 / 介護職員 / 有料老人ホーム / 高齢者施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、今後利用者の増加も見込まれ、日常生活場面におけるケアの実践も重要である有料老人ホームに焦点を当て、①スピリチュアルケアや宗教的な関わりを実践している施設の特徴、②介護職員のスピリチュアルケアや宗教的な関わりの実践に関連するスピリチュアリティも含めた特徴、について探索的に検討を行った。調査協力が得られた有料老人ホーム28施設の介護職員計79名(平均年齢43.9±12.7歳)を分析対象者とした。質問紙調査を行い、基本属性(年齢、性別、宗教の信仰の程度、施設での看取り経験、スピリチュアルケアへの興味・関心の程度)、スピリチュアリティ、スピリチュアルケアの実践、所属している施設の特徴、宗教的な関わりの実施、宗教的な関わりの評価、宗教的な関わりの実践に際して重要視する事柄について尋ねた。 結果、①「スピリチュアルケアに施設が力を入れている群」は「施設が力を入れていない群」と同程度の宗教的な関わりの実施割合であったが、「スピリチュアルケアに施設が力を入れている群」は「施設が力を入れていない群」よりも宗教的な関わりの実践に際して利用者に過度に死を意識させないこと、宗教に関する意思表示がなくても行うことを重要視していた。②介護職員はスピリチュアルケアへの興味・関心が強いほど、スピリチュアルケアを実践していた。スピリチュアルケアへの興味・関心には、宗教の信仰の程度、施設での看取り経験、宗教的な関わりに対する評価、スピリチュアルケアについて施設が力を入れているかいないかが関連していた。以上より、宗教的な関わりを実践している施設の特徴を把握する際、実践割合だけでなく実践への考え方や捉え方についても考慮する必要性があること、介護職員のスピリチュアルケアへの興味・関心には、施設の取り組みだけでなく職員の個人内要因の影響もあるため、個人内要因にはたらきかける必要性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、対象とする高齢者施設の業務面からの調査協力の得られにくさ及び調査内容がコロナ禍の影響を反映する可能性について検討を行い、予定が遅れた。それに伴い、利用者家族への調査依頼についても難航し、調査方法についての再考の必要が生じたため、予定に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は調査対象とする施設を介護老人福祉施設及び介護老人保健施設に絞る。その上で、 ①それぞれの施設の利用者家族を対象としたインターネット調査を行う。これにより、利用者に対するケアの意思決定を担う場合が多い利用者家族視点におけるスピリチュアルケアや宗教的な関わりのニーズや評価、それらが施設のケアに対する満足度にどの程度影響するかを示す。また、施設の違いによる特性や評価の違いについても明らかにする。 ②それぞれの施設において、同一利用者について利用者家族視点及び主担当だった介護職員視点からのスピリチュアルケアや宗教的な関わりの効果についての評価やニーズの違いについて質問紙調査あるいはインタビュー調査を行う。これにより、スピリチュアルケアに関する評価の類似点・相違点について明らかにする。 ①②を通して、宗教的な関わりのあり方や実践性、実践可能な内容について検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度は、①介護老人福祉施設及び介護老人保健施設の利用者家族を対象としたインターネット調査、②介護老人福祉施設及び介護老人保健施設の同一利用者に対する利用者家族と介護職員を対象とした質問紙調査あるいはインタビュー調査、の2つを考えている。①のインターネット調査依頼費用及び、②の調査協力依頼や質問紙調査に関する郵送料、質問紙の印刷料、謝礼等に使用する。また、研究成果の発表に伴う費用(学会発表に参加する費用等)にも使用する。
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