2020 Fiscal Year Research-status Report
A study on operation of Public Assistance in Japan
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19K13979
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桜井 啓太 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90751339)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生活保護 / 公的扶助 / 福祉事務所 / 貧困 / ケースワーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①生活保護制度の地方自治体ごとの運用実態、行政水準の格差を把握するための手法を確立し、②運用や行政水準の差異が生じる原因と生活保護の実施決定における諸課題を検証することを目的としている。 ①調査手法の確立と資料収集・データベース化 2020年度は、前年(2019年)度に特定した「生活保護の地方自治体レベルの運用実態・行政水準を把握するための行政資料」について実際の収集作業(主に情報開示請求)を開始し、目的に沿った資料の一部を収集することができた。ただし、(1)得られた資料はその多くが紙媒体であったため、データ入力などのデータベース化の作業が難航した。(2)情報公開請求による資料収集は、開示期限が延長される(最大で1年程度など)こともあり、当初の想定以上に期間を要した。(1)(2)により資料収集とデータベース化は相当程度の期間を要することから2021年度以降も継続して実施し、並行しながらデータ分析・論文化を行うこととした。その他、今後の分析に適した複数の自治体を選定し、選定した自治体の生活保護行政の実態を知る目的で調査(資料収集)を実施した。 ②生活保護における諸課題の検証 2020年度前半までに収集した資料のうち、先行してデータベース化した資料をもとに、生活保護の申請相談に関する福祉事務所の比較分析を実施した。この分析結果について、2020年12月に学会報告(貧困研究会)を行なった。分析結果は、国の制度である生活保護制度が実際には地方自治体ごとに運用(裁量)が大きく異なるという仮説を立証する内容となっており、今後の生活保護研究や生活保護行政に資する可能性が高い。今後データを更新して、次年度以降に論文投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査手法の開発については、ほぼ計画通り達成している。ただし、資料収集の主手段である国への情報開示請求が、資料の性質によっては当初の想定より期間を要することとなり、これに関して若干の遅れが生じている。また、収集資料の多くが電子データではなく紙媒体での提供となったこと、及びコロナ禍の影響によってアルバイトによる作業が充分に実施できなかったことから、データベース化の点で遅れが生じている。 一方で、すでに資料収集及びデータベース化が完了した一部のデータを用いてプレデータ分析を行い、その内容を学会報告した。これら分析・検証作業については当初の想定よりやや進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、前年度までの作業を継続して資料収集をさらに進める。なお、2020年度に想定していた資料のデータベース化作業について遅れが生じているため、対応策を検討しながら着実に研究を進めたい。また2020年12月に学会報告した内容について、データを更新して論文作成を行う。さらに、これまで収集したデータをもとに、本研究課題である自治体の生活保護行政水準の可視化のための検証手法の開発に着手する。
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Causes of Carryover |
情報公開請求による資料収集について当初の想定よりも開示決定までの期間を要しており、またコロナ禍によって作業人員の確保が難航し、当該費用や関連作業費用について繰り越しとなった。当該費用は2021年度に繰り越して執行を予定する。
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