2019 Fiscal Year Research-status Report
Effects of the Introduction of the Quasi-Market Mechanism on the Quality of Care Services
Project/Area Number |
19K13980
|
Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
李 宣英 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 講師 (70823615)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 準市場 / 介護サービス / サービスの質 / 競争 / 規制 / 選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで日本と韓国の介護サービス供給メカニズムを、この準市場の観点から分析を行ってきた。準市場メカニズムはいかに導入されたかを明らかにし、その歴史的な特徴とそれが現在の準市場体制に与えた影響と特徴について、日本と韓国、そしてイギリスとの比較検討にまで至っている。しかし、本研究テーマにおける未解決な点は、準市場概念が未だ漠然としており、市場化や民営化など類似した概念と混在して使われているため、他の概念と区別できる準市場領域の確立ができていない点である。さらに、準市場の進行が介護サービスの質に与えた影響と利用者および供給者の立場に立った評価にまで至っていないことである。例えば、介護サービス供給者同士の競争、政府による様々な規制と利用者選択権の保障は、高齢者ケアサービスの質に肯定的な影響を与えている側面もあれば、否定的な影響を与えている側面もあると考える。「準市場メカニズムは、国レベルでは効率性の高い手段であることは確かであるが、実際の現場レベルでも有効な手段なのか」「準市場メカニズムの導入は、サービスの質を高めたのか」「競争・規制・利用者選択の要因を個別に分解してサービスの質との関係を分析してみれば、各々の要素はどのような影響を与えているか」「供給者と利用者の夫々の立場からサービスの質を測ってみればどのような結果が得られるか」など、現場レベルにおける準市場の実際について多くの学術的問いが生まれた。そして、それらの課題は未だ明らかになっていないことに気づいた。 そこで、本研究では準市場に基盤をおいた介護サービスの提供がサービスの質へ与えた影響について解明し、サービスの質に良い影響を与える要因はさらに強化し、悪い影響を与える側面は是正していくための政策的提言を行うことを目的としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、国内外の「競争」「規制」「利用者選択」とサービスの質との関係についての先行研究の検討を行った。まず「競争」の捉え方としては、主観的な観点を主とした。サービスの質に直接影響を与えると予測されるのは、一定の地域内における客観的な供給者の数より、競争について実際の供給者の認識がより影響を与えると予測されるためである。また「規制」は、大きく3つの側面から規制を捉えることができる。市場に参入する前段階では、設備基準や人員基準、運営主体の選別、サービス総量の調整などにおいて、また参入後には、価格規制や標準価格の設定、定期的な評価を行い、さらに労働市場については、職員への教育・訓練や資格管理、賃金や福利厚生への管理などを通して規制を行っている。さらに「利用者選択」に関しては、2つの側面から検討を行う必要がある。一つは利用者が自ら最も合理的な選択をすることができる環境となっているか、もう一つは、真の選択権を保障するため、多様な形態の給付と多様な種類のサービスが存在しているかについてである。本研究では、両方に着目して選択の自律性について包括的に分析を行ってきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、準市場の要素とサービスの質との関係を検証するため、独自の分析枠組みを開発する。両者の関係の検証枠組みの具体化を図るため、日本と韓国の介護保険サービス事業所を訪問し、運営者を対象としてインタビュー調査を実施する。サービスの質を図るための尺度としては、Donabedian(1980)構造-過程-結果モデルを基にする。インタビュー調査は、日本では申請者が関わっている関西地域に所在している7か所の事業所を、韓国ではソウル市と京畿道に所在している6つの事業所を中心として行う。また、その質問票への回答を中心に自由な語りを含む半構造化面接を実施する。調査の結果に基づき、両国の状況の比較分析を行う。
|
Research Products
(3 results)