2023 Fiscal Year Research-status Report
Studies on work conditions and careers of staffs in work integration social enterprises through organizational new institutionalism
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19K13988
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
米澤 旦 明治学院大学, 社会学部, 教授 (60711926)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会的企業 / 新制度派組織論 / 就労支援 / サードセクター / 制度的起業家 / 社会政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでの研究成果のとりまとめを中心に研究を実施した。 まず、日韓の社会的企業の比較研究についての研究書や論文を刊行した。本研究で注目している政府の役割も含めた社会構造と社会的企業の制度化の関連性を明らかにすることを試みた。比較研究による主な知見としては、第一に、社会的企業が同じ時期に導入された日本と韓国社会で、社会的企業は、規模、活動分野、戦術に関して異なる傾向を持ちながら、制度化していることである。第二に、そのような制度化の違いは、社会構造への「埋め込み」と関連している点である。特に日本において韓国のように就労支援を重視する社会的企業の制度化が進まない要因として、日本と異なる労働市場の状況や社会保障制度が関連している可能性がある。 第二に、比較研究の結果から得た知見を踏まえて、日本の社会的企業の特徴についての理論的な検討を進めた。韓国と比べたときには、日本の社会的企業はロビイングなどへの強い指向性が示された。この結果からは、特に日本における社会的企業の生活保障システムでの役割を理解するためには、制度変化や新しい社会サービスの普及を促すような制度的起業家としての側面に注目することが必要だという含意を引き出せる。新制度派組織論の蓄積も踏まえて、この側面についての経験的研究の必要性を示唆するものである。 最後に、就労支援組織のフィールドワークを進めた。これまでに実施してきたフィールドワークを継続しており、ICT技術の導入が就労支援組織の専門職的支援やコミュニケーションにいかなる影響を与えるかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染症の流行もあり、国内における社会的企業の就労環境の調査は計画通りには進まなかった。これに対しては代替的な方策によって研究目的にかなう知見を得ることができた。また、日韓比較の研究を取りまとめることによって、政府の役割を含めた制度的環境と社会的企業の活動に関しては一定の成果を示すことができた。 ただし、研究計画と比べて、その前半期での遅れを取り戻すには至っておらず特に研究成果の共有には課題がある。そのため、(3)やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の共有には遅れがあるので、今年度は昨年度と同様に成果の発表に注力する。国際比較研究で示された、理論的洞察を経験的研究に結びつけることを試みる。特に社会的企業の制度的起業家としての役割の検討を進める。成果の発表は、学会や国際会議によって社会学や社会政策の研究者に対して行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表に関して計画からの遅れが生じていることによる。研究費は、学会や国際会議での報告準備のために支出する予定である。
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