2019 Fiscal Year Research-status Report
貯蔵豆の新しい調理・加工法および機能特性を有する新食材としての有効活用化の検討
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19K14006
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
郡山 貴子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, リサーチフェロー (20825369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 豆 / 貯蔵 / 硬化 / ムクナ豆 / 抗酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
豆類は栄養性・保存性に優れた食材であるが,貯蔵の温度や湿度によっては調理性が低下するだけでなく,栄養成分や食味が損失し,食用としての利用性が著しく低下する。貯蔵豆におけるこのような現象は“硬化”または“Hard-to-Cook (HTC)”と呼ばれており,豆の貯蔵には低温が適していることは知られているものの,すでに硬化した豆については有効的な活用方法が確立されておらず,多くは未利用のまま廃棄されるため,食品ロスの観点から国内外において大きな問題となっている。豆類はわが国において食文化および伝統的な調理・加工品において欠かせない食材であり,これらの問題を解決するために本研究では貯蔵後の需要の低下した豆類に新たな価値を付加し,食品素材としての用途を確立することを目的とする。そのために,調理・加工特性,嗜好性,および機能性の改善が可能であるかを明らかにし,得られた知見を食品産業だけでなく,家庭および学校や病院等の調理現場において利用可能なレベルにまで発展させることを試みる。 初年度の研究成果としては,「硬化の評価法および最適調理法の設定」を可能とした。すなわち,乾燥豆の調理中の軟化過程において“吸水による軟化”と“加熱による軟化”を段階的に捉え,速度論的に解析し,軟化モデルを考案した。これより得られた種々の豆の軟化の速度定数により,最適調理時間を算出することが可能となり,貯蔵の程度の違う豆についても調理時間を予測し,最適調理方法の提案を可能にした。 さらに,試料豆の一つとしてムクナ豆を扱い,調理性,組織変化,L-DOPA含量に及ぼす貯蔵の影響について詳細な検討を行った結果,ムクナ豆における貯蔵の影響は他のでんぷん性の豆と類似する傾向があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画としては,種々の豆の硬化現象について基礎的知見を得ること,さらに,貯蔵の影響と硬化現象の発現について定量的に評価する手法を確立することであった。 現在まで計画通りに進捗しており,得られた成果を学会および論文等にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
①貯蔵豆の新たな食材としての可能性を提示する。 豆粉の起泡や乳化物の形成・安定化については,大豆粉や大豆タンパク質を用いた研究がほとんどであるが,本研究では大豆だけでなくでんぷん性の種々の豆についても,貯蔵前・後の豆を粉末化することで,起泡性,乳化性,およびこれらの安定性にどのような影響があるかを明らかにし,実際の食品への加工性(マヨネーズ,ドレッシング,メレンゲ,パン等など)を評価する。 豆類にはポリフェノールなどの機能性成分が豊富に含有されていることから,種々の豆の貯蔵前・後における抗酸化能を測定し,比較する。抗酸化能は複数の手法(ORAC法,DPPH法,フォーリンチオカルト法)を用いて測定し,評価したうえで,豆粉末として添加した調理品についても抗酸化能を測定し,健康機能が期待される食品素材となるかどうかを評価する。 ②貯蔵豆の調理加工特性について体系化する。 これまでの実験結果を総合して,貯蔵による豆の硬化の評価法や貯蔵豆の新たな食材として利用法の有効性の確認を行い,家庭や学校・病院などの調理の現場で実際に活かせる可能性があるのかを明らかにする。その上で,豆の種類や硬化の程度に応じた最適な調理法または利用法を導くための体系化を試みる。
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Causes of Carryover |
2020年度より大学教員として常勤先(本務校)が変わることから,消耗品以外の購入を控えた。
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