2020 Fiscal Year Research-status Report
リステリアのバイオフィルム形成細胞化のゆらぎの明確化に関する研究
Project/Area Number |
19K14024
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
山本 詩織 国立医薬品食品衛生研究所, 食品衛生管理部, 研究助手 (40795291)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Listeria monocytogenes / バイオフィルム / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
食品製造環境等ではListeria monocytogenesのバイオフィルム形成による食品汚染を介したヒト健康危害が問題視されており、本菌の環境適応に係る分子基盤の解明が求められている。本研究では、L. monocytogenesの集団細胞間コミュニケーションを標的とした当該形質の制御を目指し、バイオフィルム形成に係るゆらぎに基づく環境適応機構の分子基盤への理解を深めるため、バイオフィルム形成段階に顕す細胞形質に基づいた亜集団別分類を通じて細胞構造学的及び分子代謝学的観点からその形質特性を明らかにする。 前年度では、血清型1/2aのL. monocytogenes菌株のバイオフィルム形成細胞は、細胞の形態によるバラつきが認められると共に、単一細胞から形成されるバイオフィルムでは多様な細胞形質を示すことが確認された。本年度は、バイオフィルム形成に伴う細胞集団の不均一性を理解するため、セルソーティングによるバイオフィルム形成細胞の亜集団化を試みた。その結果、浮遊細胞とバイオフィルム形成細胞間では、細胞の大きさ及び形状に大きな差異が認められず、それによる分類が難しいと判断された。一方、バイオフィルムを形成する細胞集団では付着性に差異が認められることから、物理的刺激によってバイオフィルム形成細胞を付着強度により分類することとした。分類されたバイオフィルム形成細胞を用いて、シトクロムc結合アッセイによる表面電荷およびMicrobial adhesion to solvents(MATS)法による細胞表面疎水性の変化について比較検討したところ、表面電荷や電子供与性といった電子的性質が細胞の付着性と反比例の関係にあると推測された。以上より、バイオフィルム形成細胞のゆらぎは、細胞表層構造に伴う付着強度の変動に依存する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バイオフィルムを形成するListeria monocytogenes菌株の亜集団別分類にセルソーターの使用を予定していたが、細胞形質による分類が難しいことが明らかとなり、当該手法の変更を余儀なくされた。また、本年度は新型コロナ感染症による、研究活動における物理的および時間的制約が生じたため、当初の実験予定よりもやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、次年度以降の研究に繋がる基礎的データを得ることができたため、次年度以降はメタボローム解析を通じた代謝学的差異を明らかにする。また、特定の遺伝子群に対する遺伝子発現量の定量やそれによる表現形質への影響を評価し、形成されたバイオフィルムの成熟に係る遺伝的因子についての検討を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度中に実施できなかった研究に係る予算は、次年度での研究遂行の為に持ち越すこととした。 また、本年度は新型コロナ感染症による学会中止並びにweb開催への変更に伴い、使用旅費が予定額よりも下回る結果となったため、次年度の学術誌および学会における成果発表の為に持ち越すこととした。
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Research Products
(5 results)