2019 Fiscal Year Research-status Report
熱中症予防のための快適な着物構成・着装方法の新提案
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19K14037
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
傳法谷 郁乃 神奈川大学, 工学部, 助教 (00782301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 温熱的快適性 / 暑熱環境 / 熱中症 / 衣生活 / 着物 / 素材特性 / サーマルマネキン / アンケート調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,熱中症が問題となっているわが国の夏季における高温多湿環境を考慮し,着物の和装肌着・補正小物類を含めた全体的な構成・着装方法を新しく提案し,着物着用による夏季の熱中症発生を予防し,着物を着用する人の快適性向上を目指すことである. 令和元年度は,夏季の着物着用実態を把握して問題点を明確化させ,夏に適する着物の素材について検討した.(1)夏季に着付け教室や呉服店等で聞き取り調査及びアンケート調査を実施し,夏季における着物の着用実態を把握した.夏季には和装肌着や補正小物類を減らすなどの着用者独自の工夫が見られ,多くの女性が夏季の和装は暑いと認識していることが確認された.(2)肌着・長襦袢・長着など夏用着物素材の組み合わせ効果に関する物性試験,サーマルマネキンによる熱抵抗・蒸発熱抵抗の測定を継続している.(3)予備実験として,浴衣と絽のそれぞれ一般的な着装条件における温熱的快適性について20歳代の女性を対象に被験者実験を行った.運動中・運動後の送風時に,浴衣の方が絽より温冷感は暑く,快適感は不快となる傾向が示され,夏季屋外の気流環境下では,絽の方が快適性は高いことが示唆された.引き続き素材の組み合わせ効果を検討することで,夏季の和装の快適性向上が期待できる. 今後の和装肌着の構成や補正小物類の材質・形状の改善及び,夏季に適した着物素材の組み合わせの提案に向けた意義のある基礎的知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に計画していたアンケート調査は,夏季に着付け教室や呉服店等で実施した調査結果から着物の着用実態を把握し,おおむね問題点を抽出することができた.この結果を受けて質問項目の修正が必要となり,大学でのアンケート調査には至らなかった.夏用着物素材の組み合わせ効果に関する物性試験については,素材の組み合わせ条件を追加したため,現在も測定を継続している.これに伴い,素材の組み合わせ効果に関する被験者実験は,一般的な着装条件の温熱的快適性を比較する予備実験を実施したが,本実験には至っていない.加えて,アンケート調査結果から,肌着素材特性に着目した被験者実験を継続中である.よって,研究スケジュールとしてはやや遅れているに相当すると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査は,令和元年度の成果を学会発表にて報告する予定である.夏季にCOVID-19が収束し,通常の日常生活となれば大学生を対象とした調査を継続するが,難しい場合には令和3年度に実施する. 令和元年度から測定を継続している素材の組み合わせに関する物性試験及び被験者実験を完了させ,その成果を論文にまとめる. 令和2年度の課題である着物の構成に着目し,アンケート調査で問題点として挙げられた和装肌着の構成や補正小物類の素材や形状の試作検討を行い,着用効果の検証を進める.
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Causes of Carryover |
当初予定していた大学生を対象としたアンケート調査が実施できず,女性を対象とした予備実験に必要な消耗品等の購入を優先したため。次年度の調査・被験者実験の謝金や補正小物類の試作費等にあてる予定である.
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Research Products
(2 results)