2019 Fiscal Year Research-status Report
集団給食施設における食品ロスの現状と意識に関する研究
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19K14041
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
作田 はるみ 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部食物栄養学科, 准教授 (40369723)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食品ロス / 集団給食施設 / HACCP / 給食経営管理 / 大量調理 / 衛生管理 / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
食品の生産(調理)工程で発生する野菜などの生鮮食品の廃棄部分、提供されずに残った料理、提供後の食べ残し等などを食品廃棄物という。その中で提供されずに残った料理すなわち食べられるのに廃棄される食品のことを「食品ロス」という。国は「食品ロス統計調査」で食品メーカーや卸、小売店、飲食店、家庭などの現状を把握してきた。ところが多くの集団給食施設では食品廃棄物についての報告義務はなく、食品ロスの有無や現場の意識についても不明な点が多いと考えられる。 本研究課題の目的は、集団給食施設における食品廃棄物のなかでも、食品ロスとして厨房内で「提供されずに残った料理」について、その現状を調査することである。集団給食施設では、食中毒を予防するためにHACCPの概念に基づいた衛生管理が示された「大量調理施設衛生管理マニュアル」に則り調理業務を行う。集団給食施設においては、衛生管理体制を確立し、これらの重要管理事項について、点検・記録を行うとともに、必要な改善措置を講じる。このように衛生管理された調理工程を経ていても、喫食者に提供されずに残った料理は、「調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい」と同マニュアルに記載されているため、廃棄されていると考えられる。また喫食率が変動しやすい事業所給食や、患者の入退院が頻繁に生じる病院などは、予測しながらの食数管理を行っている。同マニュアルによると、納品された生鮮食品は即日に使い切ることが前提のため、調理されて余剰になった料理は喫食者に提供されることなく廃棄されていると考えられる。 これまで病院や福祉施設など約10カ所の集団給食施設の管理者と面談した。本研究の趣旨について説明し、施設で供されずに残った料理の有無や処分方法についてインタビューを行った。質問紙調査を行うための調査の依頼先や調査項目について確認を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、個々の施設を対象とした調査研究になるため、依頼先の施設長や関連部署への同意や協力が必要となる。調査に際しては、研究者の連絡先を明確に示し、本研究の目的や方法を十分に説明した上で、協力が得られた施設に対して調査を行うこととし、個人情報を伴う調査を行うものではないため、研究機関内外の倫理委員会等における承認手続が必要となる調査には該当しないものと認識してきた。ところが施設の特定はできないとはいえ、本研究課題の調査結果が給食施設のイメージに影響することが考えられる。また給食業務をアウトソーシングしている集団給食施設も多い。その場合、給食業務を受託している業者への調査を行うことになり、調査結果は企業のイメージにも影響すると考えられる。今後正規の調査依頼を行うにあたり、倫理委員会等の承認手続きを行った上で研究課題を継続したほうが依頼先の同意や協力が得られやすいと判断した。現在は、所属機関の倫理委員会への研究計画申請書を作成している。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関の倫理委員会への審査を経て、集団給食施設に調査を依頼し協力が得られた集団給食施設に食品ロスの現状についての調査を行う。昨年度インタビューを行っているため、調査方法は質問紙を用いる。調査は「提供されずに残った料理」の有無やその処分方法、食数管理や発注の方法に関する内容とする。施設の厨房における食品ロスについては実測調査も行う。実測調査については、食品ロス統計調査(外食産業調査)に則り行う。調査対象施設は約20カ所の集団給食施設を予定している。 その後、県内の集団給食施設を対象に質問紙調査を行い、集団給食施設としての食品ロスの特徴を明らかにする。県内の給食施設協議会のネットワークを活用して質問紙の回収率をあげていく。200施設程度を調査したい。 調査結果の公表により、食品ロスの多い施設と少ない施設の特徴について明らかにし、食品ロスの発生の抑制や減量化について集団給食施設の従事者に意識してもらう。また衛生的に調理された「提供されずに残った料理」の有効な活用方法についても議論の契機となる提案を行いたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は、調査対象となる候補施設のインタビュー調査にとどまったため、調査に関係する物品や謝礼の支出が少なくなった。また年度末に予定されていた研究会などが中止や延期となり、国内旅費を使用することがなくなったため、翌年度分として合わせて請求した。 次年度は、調査の経費や調査対象施設への謝礼が必要となる予定である。調査のための研究補助員の人件費、収集したデータ分析に関する分析ソフトなどの購入費も必要となる。
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