2021 Fiscal Year Research-status Report
中華圏における労働・福祉と教育に関する研究:地域を基盤とした教育活動の検討
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19K14050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
肖 蘭 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任講師 (50730793)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 成人継続教育 / 非高等教育 / マカオ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に政策文書、先行研究等の文献調査を中心に研究を進めた。マカオに関する研究成果を論文発表の形で公表した。 論文では、マカオにおける戦後の1950年代から今日に至るまでの成人教育の展開過程を概観したうえで、1990年以降の制度化に着目し、マカオの成人教育と生涯学習に関する政策・実践の動向について考察した。植民地返還前後の連続性と変化に着目して、マカオの成人教育の特徴と実態を明らかにした。 マカオの成人教育の内容からみれば、植民地統治下で宗教教育として機能していた成人教育は、戦後においては植民地政府の自由放任主義の下で民衆自らの力で、1950年代の識字教育から1970年代の職業・技術訓練へと幅広く展開した。1980年代以降は、植民地政府が教育に取り組みはじめ、成人教育はリカレント教育の制度化、職業・技術訓練の充実化と高等教育への展開を遂げた。さらに2000年代以降の返還後において、学習社会の構築が図られ、学歴教育や職業訓練のほか、地域に根ざした教養・文化教育等の内容まで拡大しており、マルチレベルの成人教育システムが形成してきた。一方で、民衆の生活に密接に関わっている点は成人教育の本来の特徴であり、産業の変化及び就労のニーズに応じた職業教育や、生活を充実させるための教養教育、家庭教育や社区教育など、返還前後における経済と社会の発展にしたがって必要とされている成人教育の内容は変化するものの、その根本的な本質は変らざるものである。 本研究は、社会的排除に対応するための成人教育に関する実証的研究であるため、マカオの成人教育の本質の究明は本研究課題の達成に大きな役割を果たしたといえる。 マカオのほか、中国大陸の建国後の社会教育の歴史的展開についても資料収集を行い、次年度に学会発表や論文投稿といった形での公表を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はフィールド調査を中心とする実証的研究であるため、香港・マカオ・台湾におけるフィールド調査を予定していたが、コロナ禍の世界中の蔓延により、出入国が厳しく制限されているため、実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施した文献調査をもとに、論文執筆に積極的に取り組むほか、コロナの蔓延状況を勘案しつつ、フィールド調査を計画的・積極的に行う。
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Causes of Carryover |
今年度は出入国制限のため、フィールド調査に予定される旅費と調査協力者への謝金等が執行できなかった。 今年度に実施できなかった調査については、次年度に積極的に計画する予定である。
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Research Products
(1 results)