2020 Fiscal Year Research-status Report
公民館再編動向にみるコミュニティ・ガバナンスと社会教育の相克と止揚に関する研究
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19K14054
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 智子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90632323)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 公民館 / 社会教育 / 生涯学習 / 自治 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、公民館運営における「自治」の(公式・非公式の)仕組みに関する各自治体の実態と、その仕組み下での「自治」と「学習」との関連を調査し、社会教育の中で生成する学習の特質とそれを支える制度がどのようなものかを問いとしている。 当該年度は当初計画していた出張を実施できなかった一方で、新型コロナウィルス感染拡大の影響による新たな動きとして起こった「オンライン公民館」についての参与観察を行い、その概要を調査することができた。この事例が顕在化させたのは、オンラインが非公式の自治の仕組みに大きな影響を与え、それにより公式の自治の制度にも影響を与える実相である。 同時に、自治を支える民主主義の理念と文化を醸成する社会的な教育と学習を理論的に再検討し、一定の成果を得た。国家による教育ではなく、社会的な文脈を通した教育として公教育を再定位する時、そこでは熟議等のコミュニケーションを媒介した学習をコミュニティの中にデザインすることが糸口になる事を示した。 社会教育行政は近年ますます自治振興政策との連動が強化されると同時に、学校教育との関係も強化されている。その中での教育行政の役割とは、生活方法としての民主主義を根づかせ、人々が自分に関わりのある事柄の決定に関心を持って考え、対話し、行動するのを後押しする事である。その際には、私たちが日常的に行っている言語行為に意識を向け、そこで紡がれる個々人の小さな物語を他者と共有しながら、新たな知と新たな現実を再構成していく事が、教育と自治を結びつける。そのための環境を整備していく事が、公教育として社会教育という行政領域を確保する意味となる。これが実態として、社会教育を教育行政の範疇に留めず、一般行政を含めた領域横断的な組成への移行と結びついている点を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
出張等が実施できなかったことにより計画に大幅な見直しが必要となったが、その一方で、新型コロナウィルス感染拡大の影響によって生じた新しく急速な変化を観察することができ、それにより理論的な側面では大きな進捗を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により予定外の調査計画の見直しが生じたため、今後はその変更後の計画に沿って調査を進める予定である。特に、令和2年度には理論的な整理が進んだため、今後は、その理論枠組みの妥当性を検証する。 事例研究やアクションリサーチによる実証研究を進め、その上で、自治と民主主義を醸成するための生涯学習システムおよび公民館の制度設計に寄与する知見を得る。 課題があるとすれば、出張がいつ再開できるか次第であるという点である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた出張が実施できなかったため。
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