2019 Fiscal Year Research-status Report
人間関係・社会への参画・自己実現を構造的に把握する教育モデルの研究
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19K14059
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
上森 さくら 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (30623409)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 溝上泰子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、溝上泰子の生活論と教育論に着目して、自己実現に資する社会参画や人間関係の指導の在り方を構造的に把握するとともに、それに基づいた指導の在り方を明らかにすることである。 具体的には、(1)①1951~1961年(日本の底辺発見期)の生活者との交流と生活論への反映、②1962~1966年(日本の底辺発見期)の生活者との交流と生活論への反映の時期区分により溝上の溝上泰子が交流してきた「底辺」や「女」としての生活者の実態が、どのように溝上の生活論に反映しているのかを明らかにすること、(2)その上で、特に溝上泰子の個人と集団の関係性の捉え方が教育論に反映しているのかを明らかにすることが本研究の目的であった。 現在、貧困地域での組合活動や家庭運営を行いながら自己を見つめ「場」に「座」を立てることを論じた溝上と、世界平和の追究の場として学道道場としてFAS協会という組織の立ち上げを必要とした久松真一の「座」についての記述を比較することで、溝上の個人と集団の関係性の捉え方の特徴をより浮き彫りにできると考え追求している。この比較において、両者に共通することは、たとえば、座から照射される世界は人間の歴史という縦軸と世界人類に普遍する問題・要求という横軸であらわされるものとして考えていることである。一方で、相違点は、個人が広く世界を照射する自己の「座」をたてることとその「場」である集団の関係性を探るときに、集団にどのような機能・役割を求めるのかということにあるのではないかという仮説を立て追求している。 本年度の研究実績は本来の研究計画からは逸れたものとなっているが、溝上泰子の生活論の独自性をより鮮明にすることができると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
久松との比較によって溝上の生活論の独自性を明らかにすることは当初の研究計画に含まれていなかった。そのため、「やや遅れている」と評価した。しかしながら、本研究の目的である溝上の生活論の構造的把握のためには重要な視座を得られるものと確信している。
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Strategy for Future Research Activity |
久松との比較により溝上の生活論の独自性を明らかにしたのち、①1951~1961年(日本の底辺発見期)の生活者との交流と生活論への反映、②1962~1966年(日本の底辺分裂期)の生活者との交流と生活論への反映の時代区分によって、当初の計画に戻り、溝上泰子が交流してきた「底辺」や「女」としての生活者の実態が、どのように溝上の生活論に反映しているのかを明らかにする。コロナ問題によって現地調査について懸念があるが、当面は文献研究で進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初、物品費としては現地調査のためのノートパソコンとその周辺機器、プリンターを購入予定だったが、研究にメインで使う予定であったためのパソコンが故障し、予算計画を変更せざるを得なくなった。プリンターや現地調査のための旅費としてはやや足りない額が余ってしまった。それらは2020年度使用額に繰り入れた後、改めてプリンター購入に充てたい。
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