2019 Fiscal Year Research-status Report
カリキュラムの創発現象の解明―子どもの観察と記録による教師の省察に焦点あてて―
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19K14066
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大島 崇 大分大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (70715276)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カリキュラム / コミュニケーション / 教師 / 子ども / 創発 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、小学校の学級を対象に参与観察を実施し、教師と子どものコミュニケーションを分析することを通してカリキュラムの創発性についての試論的考察を行った。 小学校の5年生の学級を対象に参与観察を実施した。「学級活動」「算数」「給食」の逐語記録を作成し、教師と子どものコミュニケーションに着目して検討を行った。 当該学級の教師と子どものコミュニケーションの特徴は以下の5点であった。 ①教師は子どもの言動を共感的に受け止めようと努めている。②教師は予想外の子どもの言動から子ども理解を更新しようと努めている。③教師は子どもの発言に対して自分が感じたことを何らかの形で発信する。④教師は自分が発信したことに対しての子どもからの応答を待つ。⑤あらゆる「材」を介して、①~④のやりとりがなされる。 子どもからのメッセージを理解しようと努め、絶えず子ども理解を更新(すなわち「学習」)し、子どもからのメッセージに対して自分が感じたことを発信し、子どもからの応答を待つ。これは「勝手に作り上げた像の押し付け」や「学習のフリ」をしていないという意味において「創発的コミュニケーション」(安冨2008)が成立していると考えられ、あらかじめ作られたものではなく、まさに教師と子どものやり取りの中で学び(カリキュラム)が創発している事例といえるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリキュラムの創発性についての予備的考察として、現在の小学校を対象に教師と子どものコミュニケーションの分析を行い、カリキュラムが創発する実践におけるコミュニケーションの特徴を試論的に示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カリキュラム論を中心に教育実践研究の先行研究について検討を行い、カリキュラムの創発についての概念整理をする。現在の教育実践に加え、戦後初期のカリキュラム開発の検討など歴史的アプローチによる研究も進めていく。
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Causes of Carryover |
関連性の高い別の科学研究費の研究題目が期間延長となり,昨年度は研究期間が重なったため。 次年度使用額については,関連書籍の購入等の物品費,学会参加や調査等の旅費に充てる。
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Research Products
(1 results)