2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of lifelong learning institutions in Finland
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19K14070
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Research Institution | The University of Fukuchiyama |
Principal Investigator |
大谷 杏 福知山公立大学, 地域経営学部, 准教授 (50760576)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生涯学習 / 成人教育センター / 市民カレッジ / フィンランド / カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では、技術の高度化、社会の高齢化、学籍社会から資格社会へのシフトにより、生涯学習の必要性が認識されているにもかかわらず、その参加率は僅か25%に留まっている。本研究は、生涯学習への参加率が世界でもトップレベルの66%を誇る北欧フィンランドの生涯学習機関に焦点を当て、その高い参加率の要因を探り、日本の参加率向上への示唆を得ることを目的としている。 初年度にあたる令和元(2019)年度は、関係資料の収集、翻訳及び現地調査を行った。前半にインターネット上で閲覧可能な訪問先の資料を収集、翻訳し、訪問先への調査票の送付や日程調整等を行い、8月19日から26日までフィンランド共和国のロヴァニエミ市、オウル市、ヘルシンキ市にてヒアリング調査や資料の収集を実施した。本研究では、都市と地方との比較を行うために、フィンランドの地方への訪問も予定をしている。初年度は北部地域を中心に調査を進めた。ラップランドに位置するロヴァニエミ市では、当初から予定していた公立のロヴァニエミ市民カレッジ、私立のロヴァーラカレッジでの校長へのヒアリング調査や施設見学に加え、ラップランド大学、オウナスリンネ図書館、ロヴァニエミ図書館にて情報収集を行った。オウル市では、公立のオウルカレッジで校長、関係者へのヒアリング調査、施設見学、私立のヴォーレカレッジで校長へのヒアリング調査を行った他、同市内で生涯学習機関として位置づけられているOSAO、市の広報機関、北オストロボスニア夏期大学も訪問した。ヘルシンキ市では、次年度以降の調査へ向けて、ヘルシンキ市立図書館オーディとリクハーディングカトウ図書館で成人教育センター、市民カレッジの資料収集を行った。いずれの都市においても、当初訪問を予定していた関係各所を全て訪問した後、市内の中心部の公共施設等を訪れ、それらの生涯学習機関がどのような形で広報活動を展開しているのかを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、国内での事前準備にやや課題が残ったものの、現地調査に関しては予定していた以上に目標を達成することができた。研究活動は概ね順調に進んでいる。 フィンランドでの現地調査では、当初予定していたロヴァニエミ市内、オウル市内の訪問先(ロヴァニエミ市民カレッジ、ロヴァーラカレッジ、オウルカレッジ、ヴォーレカレッジ)にてヒアリング調査や施設訪問を行った他、それぞれの市内と首都ヘルシンキ市内において成人教育センター関連の資料を収集し、市内における広報方法を確認した。また、予定の訪問先全てを訪れた上で、ヒアリング調査や地元市民から得た情報から、現地のいくつかの関連機関にまで足を運ぶことができた。ラップランド大学、ロヴァニエミ市内のオーナスリンネ図書館、ロヴァニエミ図書館、オウル市の市民向け広報機関、OSAO、北オストロボスニア夏期大学でヒアリングや資料収集を行うことができ、フィンランドでの調査は予定以上に充実したものとなった。 しかし、渡航前に日本で行う予定であった事前調査や翻訳作業を充分に行うことができず、立地を測定するための地図ソフトの技術習得や日本国内の生涯学習に関する現状把握についても、急遽必要となった翻訳関係の予算や時間の関係から、初年度に実施することが叶わなかった。フィンランド帰国後の成果物の学会発表や論文提出も当初の計画通り、今年度中にではなく次年度以降となる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる2020(令和2)年度は、当初、フィンランド南部に位置するタンペレ市、ユヴァスキュラ市、トゥルク市での調査を予定していた。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、現地施設が休業中であるため、夏の調査予定を延期し、翌2021(令和3)年度の首都ヘルシンキ市、東部ヨエンスー市への調査と併せて行うことを検討している。今回の調査では、国内で2番目の規模を誇るオウルカレッジを訪問したが、そこで国内最大の公立の成人教育センターが今回の研究計画に含まれていないラハティ市にあることが明らかとなった。したがって、2021年度は当初の調査予定地にラハティ市の成人教育センターを加え、計6都市で現地調査を行う予定である。 2020年度は、初年度である2019年度に充分行うことができなかった日本の生涯学習の現状把握と立地条件を測定する地図ソフトの技術習得、フィンランドの国家的生涯学習政策に関わる翻訳作業と同時に、調査のまとめ、分析作業を行い、現地調査の成果を当初予定していた日本国際教育学会第31回大会(新型コロナウイルス蔓延のため、2021年に延期)ではなく、日本教育学会第79回大会(8月24~28日)にて発表する。また、秋以降、論文として公表していく方向である。
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