2020 Fiscal Year Research-status Report
近代学校教育における「校訓」:明治期を中心にした教育勅語相対化のレトリック分析
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19K14076
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
岩木 勇作 創価大学, 教育学部, 助教 (60824042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 校訓 / 校訓制定 / 教育勅語 / 戊申詔書 / 勅語の御趣旨 / レトリック分析 / 自校教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、各学校における校訓が教育勅語を相対化して自校教育の中に位置づけるものであったことを明らかにすることを目的としている。そこで以下の四つの研究課題を設定している。 各学校における校訓制定に関する資料を収集・分析し〈課題Ⅰ〉、明治期の勅語・詔書および校訓に関する政府と世論の動向を解明する〈課題Ⅱ〉、以上の成果に基づいて、自校教育における教育勅語の位置づけをどのようなレトリックで相対化していったかを明らかにする〈課題Ⅲ〉。各学校の事例をもとにレトリック分析を行い、相対化レトリックのモデルを示す〈課題Ⅳ〉。 当該年度は世界的なコロナ禍により課題Ⅰ、Ⅱの資料収集等が困難になったため、不十分な形ではあるが、課題Ⅲ、Ⅳに取り組むこととなった。明治期に行われた3つの校訓調査の報告を手がかりに当時の校訓認識を確認し、調査の中で何度も言及されている校訓制定における共通のレトリック「勅語の御趣旨」に着目した。明治期の東京府内小学校の校訓を一覧表にまとめ、「勅語の御趣旨」が各学校によって1~12の様々な徳目・文章として表現されているという仮説を立てた。校訓は勅語そのものではないが、「勅語の御趣旨」として各校の勅語理解を反映していることが推測できる。また「勅語の御趣旨」というレトリックが各校による多彩な勅語理解を生み出している可能性を指摘した。 この内容をまとめ、当該年度の教育史学会および日本教育史研究会の機関誌へ投稿した。以上が当該年度に実施した研究の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年2月以来、コロナ禍等の影響により、資料を所蔵している図書館、博物館へ行くこともままならず、資料調査のための出張も困難である。大学施設の使用も制限されているため、研究環境が著しく悪化している。現在においてもその状況は変わっていないため研究課題の進捗状況は「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
資料調査、資料収集等は今後も可能な限り継続する。研究計画では研究の収集対象となる資料として明治期の、①学校史資料、②政府刊行物、③自治体刊行物、④教育雑誌、⑤教育勅語・戊申詔書解説書を挙げているが、コロナ禍等の現状を鑑みて、収集対象の資料を限定する。
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Causes of Carryover |
2019年2月以来のコロナ禍等の状況により、予定していた資料調査等のための出張が困難になり余剰分が生じた。次年度についても同様にコロナ禍によって出張・調査の困難な状況が想定されるため、資料収集は、移動の感染リスクのない電子複写や図書・雑誌購入によって入手することが大幅に増えることになる。今回生じた次年度使用額はその資料収集分に充当される予定である。
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