2019 Fiscal Year Research-status Report
韓国高等教育における高齢者教育の実証的研究:ダイバーシティ保障の教育モデル構築
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19K14077
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
金 明姫 創価大学, 教育学部, 助教 (20824098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高等教育 / 高齢者教育 / ダイバーシティ保証の教育 / 世代間統合の学習共同体 / 韓国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高齢者への大学教育を、高等教育におけるダイバーシティ(diversity)実現という人間主義的観点から捉え、(1) 比較・国際研究の視点から、韓国を事例をとし、韓国の高等教育における高齢者教育の現状について実証的研究・理論的研究を行い、(2)高齢者が正統な大学構成員として在学生とともに学び、互いの知識と経験、文化を共有し合う、世代間を統合したage-free、age-integrated、multigenerationalな学びの場としての大学の教育モデル構築の可能性を、実践と理論の双方において解明することを目的としている。 初年度である本年度は、日韓における高齢者への大学教育の先進的実践事例を収集する調査を行った。まず、韓国の場合、1975年から大学附設平生教育院に「老人大学」を開設し、現在60歳以上の高齢者を対象に「社会指導者教育課程」を運営している大邱大学と高齢者を大学の構成員として位置付けて大学講座を開放する「名誉学生制度」を運営している全北大学、の2大学を中心に関係者への聞き取り調査と関連文献調査を行った。 次に、日本の高等教育における高齢者教育の一事例として、高齢者が通常の高等教育を若い在学生と同様に学び、世代間を統合した学びの場としての手がかりを得るため、大学通信教育の面接授業(スクーリング)についての調査を行った。私立大学通信教育協会に加盟している大学のうち、高齢の学生が比較的に多い創価大学の通信教育部における取り組みに焦点を当てて、スクーリング(地方スクーリング、夏期スクーリング)授業を受講する学生を対象に学習実態調査(アンケート調査、約800名)とインタビュー(約30名)を行った これらの事例調査で得た研究成果をもとに、日韓の高等教育における高齢者教育事例として次年度(2020年度)に所属した研究学会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、韓国をはじめ日本の高等教育における高齢者教育事例に関する調査が進められている。これらの調査をもとに、韓国の研究者との共同研究を開始することができ、次年度にその成果を発表する予定である。ただし、韓国の場合、大学における学習に参加している高齢者へのインタビューと授業観察は、韓国に滞在しながらより長期間にわたる調査計画が必要であるため、次年度の調査課題として残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、以下の3点にまとめられる。 第一に、2019年度に行った日韓の高等教育における高齢者教育の実証的研究(アンケート調査とインタビュー調査)の分析と結果にもとづいたケーススタディを蓄積した上で、高等教育における高齢者の学習モデル構築の有効性を解明する。 第二に、韓国の高等教育における高齢者教育に参加する高齢者へのインタビューと現役学生と大学教員、そして高齢者との相互間の知識や経験の共有の場面である授業観察を行う。 第三に、日韓における高等教育改革の文脈から実施されるシニア世代、中高年への大学開放や生涯学習の現状を踏まえ、高齢者教育に関わる主要理論、高等教育における高齢者教育理論等についての理論的研究を集中的に行う。
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Causes of Carryover |
本年度に発生した使用額のなかで大きな比率を占める旅費については、科研費と所属大学の個人研究費の双方から支出したためである。 差額としての残高は、韓国文献(デジタル文献、ダウンロード型)の購入など関連文献の収集に充当する予定である。
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Remarks |
韓国における女性高齢者の識字教育(日本生涯教育学会「生涯学習研究e事典」)
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