2021 Fiscal Year Research-status Report
教員の処遇改善に向けた学力テスト結果の活用と影響に関する日米英調査研究
Project/Area Number |
19K14078
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
西野 倫世 大阪産業大学, 全学教育機構, 講師 (20823983)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学力テスト結果の活用と影響 / 教師の処遇改善 / Value-Added Assessment / 日米英調査 / 子どもの学習権保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度の研究実績は以下の通りである。 ■論文発表1報■全国学会の委員会活動の一環として,前年度学会報告した内容を論文にまとめ,全国学会の学術雑誌(招待論文)で発表した。4か国(米・英・豪・NZ)の学校管理職スタンダードの動向と特徴を分析した結果,本研究で着目する学力テスト結果の活用といった「エビデンス」の観点に加えて,公正性の重視等「ヒューマニティ」の観点において各国で共通性を確認できた。 ■学会報告3回■第一に,上述した全国学会委員会の活動として4か国(米・英・豪・NZ)の学校管理職スタンダードを対象にテキストマイニングを行い,各国の特徴や異同を可視化・分析するとともに,その結果から浮かび上がるわが国の動向の特徴と課題について報告を行った。第二に,後述の「書籍発表」で記す著作を手がかりに米国の教職が有する専門文化の再検討を行った。第三に,米国では1920年に研究が始まり,近年の教員処遇策で注目度が高まっているteacher effectiveness概念について,各時期の社会動態に注目しながら,その歴史的変遷と現代的特質を整理・分析した。 ■書籍発表1報■米国の社会学者ローティが教職文化について分析した名著(1970年代出版)を翻訳・刊行した。米国における伝統的な教職文化や職務内容に関する分析内容を整理する中で,本研究の主題である「教師の処遇改善」の基盤となる知見を得ることができた。 ■学位取得■本研究を含めたこれまでの研究を博士論文としてまとめ,学位を取得した。具体的には,2000年代以降米国で興隆してきた学力テスト結果を通じた教師の効果(teacher effectiveness)測定に関する動向について,その理論的到達点とされるValue-Addedモデルを具体的素材として検討し,その意義と課題を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画では,①政策形成過程面の分析に重点を置いて文献調査を充実・発展させること,②状況が許せば渡航調査を実施することの2点を想定していた。 前者については,文献調査を進めながらこれまでの研究をまとめる中で,米国ではいかなる推進要因と理論に基づいて学力テスト結果が教員処遇の決定要因とされたのかを解明した。なお,この成果の一部を博士論文にまとめるとともに,全国学会の学術雑誌および学会発表を通じて成果を発信した。 後者については,新型ウイルスの影響で渡航調査を実施できなかったものの,当該年度開始前からその状況を想定し,研究計画を次のように修正していた。すなわち,渡航調査に向けた理論枠組みの形成・強化を目標にするよう切り替えたのだが,当該年度は上述の研究実績で記した通り,その目標を達成することができたため,次年度以降速やかに渡航調査を行う準備が整っている。加えて,国内の研究ネットワークを活かして日本の教員評価結果の現物(複写)の入手に成功した。 以上から,状況が許す範囲で本研究の遂行に向けて研究を進めることができたため,進捗状況として上記区分を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度の研究の推進方策としては,政策形成過程面および教育活動への影響分析を二本柱として研究を進める予定である。 前者については,米国の調査を進める中で形成した理論枠組みに即して日米英の動向を分析し,各国の異同を解明する。例えば,英国ではなぜ教員処遇と学力テスト結果を連動させない方針が採られたのか,米国では教員処遇の決定に学力テストを用いた結果いかなる影響が生じているのか,日本(大阪市)ではなぜ教員処遇と学力テスト結果を連動させる構想が生じたのかについて,文献や政策文書の調査(および可能であれば実地調査)から検討を進める。 後者については,学力テスト結果の処遇反映に伴う教育活動の影響を分析するため,大阪市の関係者に面会し,処遇の変化や学校現場への影響等について聞き取り調査を行う。 なお,上記作業と並行し,未だ渡航したことのない英国での調査を円滑に進めるため,研究ネットワークのある英国教育研究者に政策関係者の紹介および資料提供を依頼する。可能であれば英国の教育関連学会に同行させてもらい,資料収集と関係構築に努める。
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Causes of Carryover |
前述したように,例年最も大きな支出を占める渡航調査を当該年度に実施できなかったことが,次年度使用額が生じた大きな要因である。次年度においても新型ウイルスの影響等から渡航調査を速やかに実施できるか定かではないが,状況が許せば米国や英国に赴いて関係者へのインタビュー調査や資料収集を行い研究計画の遂行に努めるとともに,研究を推進する上で必要な研究ネットワークについても構築を図りたい。
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Research Products
(5 results)