2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14081
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Research Institution | Aichi Konan College |
Principal Investigator |
亀澤 朋恵 愛知江南短期大学, その他部局等, 准教授 (60736239)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無試験検定 / 教育史 / 教員養成 / 中等教員 / 美術教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前期の中等教員養成ルートの一つである無試験検定のうち、「図画科」を解明することを目的とする。本研究により、(1)無試験検定研究において未検討であった「図画科」の事例を解明する(2)戦前期の中等図画教育の歴史的特質の解明へも寄与すること、これら2点の成果が見込まれる。 戦前期の中等教員養成ルートは第1に高等師範学校・女子高等師範学校、第2に無試験検定、第3に試験検定(通称「文検」)の3種類が存在したため、総体的に把握するには、それぞれのルートについて実態を解明する必要がある。本研究が対象とする第2のルート、無試験検定は教員を量的に最も多く供給しながらも、第1、第3のルートと比較して研究が立ち後れていたが、船寄俊雄・無試験検定研究会らにより研究が進展した。無試験検定の全体像を把握するためには学科目ごとの検証が不可欠であるが、未検討のまま残されている学科目がある。本研究ではその一つである「図画科」を対象とした。 各年の『文部省年報』に発表された教員免許状の取得状況をまとめると、「図画科」において無試験検定による免許状取得者が約7割を占めていることが分かった。第1のルート、高等師範学校や東京美術学校がいわゆる「主流」であるが、量的な影響を鑑みると、無試験検定によって教員免許状を取得した図画教員が圧倒的に多く、教育現場に与えた影響は大きいと判じざるを得ない。 無試験検定出身者においても修学歴によって性格や教育内容は多様であるが、戦前期を通して「許可学校」に認定されたのは京都絵画専門学校と女子美術専門学校の2校のみである。この2校に着目し、教育課程等の分析をすることで、図画科の無試験検定の認可の過程、中等図画教育の実態の解明に展望が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では以下の六つの分析課題を設定しており、作業を行っていた。①無試験検定の「図画科」の枠組みの整理(実施校の特定、無試験検定の教員免許状取得者の統計データの整理など)②各校の教員スタッフの履歴・業績③カリキュラム④生徒の学力⑤教育実習、および実習・実地教育⑥施設、設備。分析課題①は本研究の準備として設定し、②から⑥は、無試験検定の先行研究をまとめる際に共通する分析視点として定めたものであり、本研究においても基本的にこれに倣うこととした。分析視点②~⑥に共通して必要となる作業は、無試験検定の各校の沿革史、教育課程(『一覧』など)、同窓会に関連する刊行物、「許認可文書」(国立公文書館蔵)の調査・分析である。 研究期間の前半(2年間)は資料収集・調査に重点を置き、初年度(2019年度)の作業課題は(1)無試験検定「図画科」に関連する資料収集・調査を行う(2)分析課題①を、船寄ら編『近代日本中等教員養成に果たした私学の役割に関する歴史的研究』(学文社、2005年)所収の資料集と研究代表者が収集した資料にておこなっていた。 昨年度(2020年度)の作業課題は(1)前年度の作業を継続する。(2)分析課題②から⑥を並行して行う予定であった。分析課題②④⑤について部分的に現地調査が必要と想定していたが、新型コロナウィルス感染症の流行と感染症予防のため、緊急事態宣言による移動の制限、施設の休業、学会・研究会の中止等の要因が重なり、作業が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は(1)研究の折り返し年度として、前年度までの作業の継続と補充を行う。(2)分析課題②④⑤に集中的に着手する。(3)研究の中間総括として、日本教育学会、教育史学会、大学美術教育学会等で研究発表または論文投稿を目指す。 これら三つの作業課題を設定していたが、前年度までの資料収集と整理が想定より進展していない状況である。本来、作業課題(2)を重点的に進める予定であったが、今後もしばらくコロナウィルス対策による移動制限、施設休業等も見込まれるため前年度から継続して(1)をやや重点的に行い、(2)を手掛けていくものとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行と感染症予防のため、緊急事態宣言、施設の休業等の要因が重なり、移動に制限がある状態である。そのため、調査のための旅費の執行が予定より遅れている。昨年度より引き続き本年度もコロナウィルス感染症の状況には注意が必要であり、旅費の執行の予定が見通せない。感染者が多い都市部(東京都、京都府)にある資料がおもな調査対象であるため、状況をみながら調査を継続するものとする。
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