2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバル人材育成のための学際的ヒューマンライツ教育の創出-日英米の比較を基に-
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19K14084
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 美能 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (60574168)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒューマンライツ / 日米英の比較 / 人権教育プログラム / 社会的弱者 / 人権と歴史 / 社会正義 / 法律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本、アメリカ、イギリス(以降、日米英)の大学における人権教育を比較・分析することで、グローバル人材育成に直結する人権教育プログラムを提案することである。1年目の2019年度は、3か国で実践されている人権教育の実態調査を進めた。調査手法は、3か国の国立・私立・公立大学を対象に、インターネットを通じて、ヒューマンライツをキーワードに、シラバス検索を行って入手できた全シラバスを対象に、リサーチアシスタントの協力を得ながら、1つ1つシラバスの内容を読み、分析し、授業の実践方法や授業で取り上げているテーマについて集計した。 調査により、日米英では人権の捉え方、授業における実践上のテーマに違いがあることが確認された。日本では「社会的弱者に対する差別と人権」を取り上げる授業が多い中、アメリカでは「人権と歴史」をキーワードに取り上げる授業が多く、イギリスでは個々が有している権利を法律で守るという視点でコースが設定されていた。また、アメリカでは『社会正義』をテーマに取り上げる授業が多いが、イギリスでは法律を柱に据え、刑法や司法の関係で人権を扱う傾向があり、国際人権法やヨーロッパの人権に関わる授業も多数確認された。さらに、イギリスでは人権を批判的に考察する力やディベート力、時間管理能力といった研究力を身に付けることも目標となっていた。 ただ、本調査は日本の教養教育、およびアメリカのGeneral Education に対して行っているのに対して、イギリスでは専門的な授業、Moduleの1つで開講されたものが対象となっており、授業の位置づけが異なっていることから、単純に比較することはできない。 来年度以降は、グローバル人材育成のための普遍的な人権教育プログラムの構築という観点から、日本の人権教育をベースに、米英の実践を取り込みながら、研究を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究は、日米英の人権教育で実践される授業についてインターネット情報収集を中心に進めた。得られた結果を基に、3か国の代表的な人権教育実践校を絞り込み、訪問やスカイプ、メール等を利用して、聞き取り調査を行った。 1年目の成果として、本研究の骨格となる3か国の人権教育の実践上の相違点が明らかになったことから、これらをベースに普遍的な人権教育を探求していくことが今後の課題である。2年目以降は、実際に一定期間米英に滞在し、授業参加と参加者の学習成果を測定することにより、人権教育の学びの成果を明らかにしながら、人権教育プログラムの内容を探求、提案する予定である。 1年目の研究成果は、人権教育に関わる国際会議での発表や、国内の学会誌への投稿を通じて発信している。最終年度には、グローバル人材育成のための普遍的な人権教育プログラムの提案ができるように、計画通り調査・分析を進め、成果を定期的に国内外の学会、会議で発表して、人権教育の普及・発展に寄与する活動につなげる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、一定期間授業見学や聞き取りに関する訪問調査を通じて、米英の人権教育の授業を参与観察し、参加者の学びをアンケート調査を通じて測定することで、人権教育の成果を確認する予定である。現在、新型コロナウイルスの影響で、海外渡航が難しい状況があり、予定していた訪問調査の中止を余儀なくされているところではあるが、状況が落ち着き次第、訪問調査を計画したいと考えている。 同時に、世界で広まるオンライン授業を利用して、米英で展開される大学における人権教育の授業に自ら参加し、実践上の取り組みから得られる示唆をまとめることで、計画していた訪問調査よりも多くの情報収集ができるのではないかと期待している。現在、既に訪問を予定していた大学とは、オンラインでの授業参加、ディスカッションの可能性を打診しながら、継続的な情報収集、および分析を行っている。 最終年度は、研究成果の発表、発信を中心に考えており、本年度は調査研究を通じてグローバル人材育成のための普遍的な人権教育を具体化すべく、文献収集はもちろんのこと、調査研究を深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウイスの影響で、予定していた調査研究出張をキャンセルすることとなり、やむを得ず、旅費の支出がゼロとなった。次年度は、状況が落ち着き次第、国内外の調査研究を開始したいと思っており、今年度に収集した情報を基に既にコンタクトをとっている大学に対して、担当教員を訪問し、聞き取り調査を行う予定である。それだけでなく、一定期間米英の大学に滞在し、授業の観察、および学生の学びを測定するアンケート調査などの実施も予定している。
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Remarks |
研究成果を発信するために、個人のホームページを立ち上げました。今後、随時成果を発信し、更新する予定です。
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Research Products
(8 results)