2019 Fiscal Year Research-status Report
ニュージーランドにおける新自由主義教育改革の展開とインパクトに関する比較研究
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19K14088
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 望 群馬大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (10646920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新自由主義教育改革 / 英連邦 / 学校組織マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新自由主義教育改革の展開とそのインパクトを、ニュージーランドを事例に追究することを目的として設定している。そのために、①いかなる過程を経て改革は実施され、どのような影響を学校(教職員)、教育行政、地域社会にもたらしたのか、史的展開を含めて検討を行う。また、②諸外国(イングランド、オーストラリア)の教育改革動向を分析し比較検討することで、ニュージーランド事例を相対化し、その特質を明確にする。そして、③政策上の重要課題として位置づけられる学校の組織マネジメント力の向上を導く要因を解明する。 本研究の1年目にあたる今年度は、(1)新自由主義教育改革においては、各学校の裁量が多くなり、校長を始めとする学校管理職の力量が問われる環境が構築されることに鑑み、各国において、学校管理職の力量の確保・向上のためにどのような取組がなされているのかを検討した。(2)各国における関連学会に参加することで、当該国での最新の研究動向を把握することに努めた。 (1)については、オーストラリアビクトリア州においては、教育省管轄のBastowが州内の学校管理職の養成・研修を中心的に担い、大学等と連携しながら、様々なプログラム提供を行っていることが明らかになった。NSW州においては、近年教育省内に新設されたスクールリーダーシップ機構が、大学等との連携を通して養成・研修システムを構築しつつあることが明らかになった。イングランドにおいては、NPQHなどの研修資格が学校管理職にとって有益に機能していること、また近年その運用に変化が見られることが明らかになった。ニュージーランドにおいては、民間企業が学校管理職に対する支援を提供していることが明らかになった。(2)については、2019年7月にBELMAS、2019年10月にACELに参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新自由主義教育改革の展開において、その質を充実させるためには、学校管理職の力量が重視される。各国においては、学校管理職の力量の確保・向上のため、大学や民間企業との連携にもとづいた研修プログラムが構築・展開されていることが見出された。ニュージーランドは、他国と比較すると、民間企業の関与する割合が大きいことが指摘された。 一方、こうした現代的展開の分析の深化を図るためには、今後、背景にある史的経緯や改革推進要因についての分析が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本研究の2年目にあたるため、引き続き、ニュージーランドだけでなく、オーストラリア及びイングランドの改革動向と実践の情報収集を行う。得られた知見は、ニュージーランド事例との比較検討に活用する。 具体的には、次年度の方針として、以下が挙げられる。 (1)ニュージーランドだけでなく、オーストラリアとイングランドにおける新自由主義教育改革に関する史的分析を行う。現代的実践につながる背景には、どのような経緯等があったのかを分析し、史的視点を踏まえた検討を行う。(2)引き続き、3か国における学校管理職の養成・採用・研修の具体的取組について、さらなる検討を行う。また、(3)と関連し、ニュージーランドで現在展開されている教育改革の特徴とオーストラリア、イングランドの比較検討を行う。(3)ニュージーランドの現政権が進める大規模な教育改革の実相を具体的に精緻に捉える。
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Causes of Carryover |
次年度に使用することのできる研究費が生じた理由として、訪問及び研究打ち合わせを予定していた海外の研究協力者の研究状況に変更があったことが挙げられる。当初の訪問調査計画に変更が生じたため、繰越額が生じた。 こうした状況を踏まえ、繰越した研究費は、主に調査旅費に充てる。新型コロナウイルスによる影響によっては更なる変更が予想されるが、海外の研究協力者とともに密に連絡を取りながら、訪問予定の調整、及びオンラインを活用した研究打ち合わせ等を通して、研究を進めていく。
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Research Products
(6 results)