2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K14091
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
八田 幸恵 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (60513299)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カリキュラム開発 / 羅生門的接近 / カリキュラム評価 / 学校を基礎にしたカリキュラム開発 / パフォーマンス評価 / ポートフォリオ評価 / ステイクホルダー / 参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では二つの課題を設定している。第一に、OECD-CERIのカリキュラム評価論の変遷を明らかにすることで、日本におけるカリキュラム評価論を再創造するという課題である。この課題については、日本において部分的にしか紹介されてこなかった1970年代のOECD-CERIにおける「カリキュラム開発」セミナーの成果を体系的に整理し、1970年代のOECD-CERIにおいては、「行動目標とそれを参照した量的評価」への批判は確かに存在したが、その理由は多岐にわたっており、それらの交点は「行動目標とそれを参照した量的評価」という評価のあり方が重要なステイクホルダーを評価から除外するという点にあったことを明らかにした。このことを書いた論文は現在投稿中である。 第二の課題は、申請者が継続的に共同研究を行っている福井県立若狭高校を事例として、SBCD(学校を基礎にしたカリキュラム開発)を支える教育目標と評価のあり方を模索するという課題である。この課題については、コロナ渦においてはフィールドワークという研究方法がかなわなかったため、若狭高校SSH研究部が発行してきたSSH報告書を経年的に読み解くという研究方法を採用した。その結果として、次のことが明らかとなった。まず若狭高校では、学校の中央で開発されたカリキュラムが学校の周辺で再開発されるプロセスを組織しており、学校内外の多様な参加者によってカリキュラムが開発・再開発され、その成果が学校全体に根付くことで、カリキュラムが持続的に発展していくという過程を辿っていた。そしてその過程において、スローガンレベルでの教育目標を設定し、その教育目標を具体化する評価規準・基準を作成するとともに、スローガンレベルでの教育目標に照らして成果を評価する機会を組織していた。このことは論文にまとめてすでに公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一の課題については、当初は公刊された史資料を分析することに加えて、1970~90年代のOECD-CERIに関わった人物にインタビューするという予定であった。しかし、コロナ渦においてインタビューがかなわなかった。ただし、第一に課題については理論研究であるため、あくまで公刊された史資料を分析することがメインであり、それについては予定通り推進することができた。 第二の課題については、当初は福井県立若狭高校に伺ってフィールドワークを行いデータ収集を行う予定であった。しかし、コロナ渦においてはフィールドワークという研究方法がかなわなかったため、若狭高校SSH研究部が発行してきたSSH報告書を経年的に読み解くという研究方法を採用することで、現在に至るまでのカリキュラム開発を分析することができた。このことは、現在行われつつあるカリキュラム開発を進める上でも、重要なことであると考える。ただし、現在に至るまでのカリキュラム開発に関する分析についても、現在行われつつあるカリキュラム開発の分析についても、公刊された報告書に掲載されているレベルのデータのみならず、それぞれの教師が開発したワークシートや授業中の指導言や生徒たちの学習の様子など、実際の指導・学習・評価のあり方を示すデータを収集することが必要となる。コロナ渦においても、たとえば若狭高校の教師にお願いし、これらのデータを送ってもらうといったことは可能かもしれないが、現場教師に負担をお願いするわけにいかないと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第一の課題については、公刊された史資料を分析することをメインに研究を推進していく。OECD-CERIのカリキュラム評価論は1980年代に転換を迎えることになるが、これまで1970年代のOECD-CERIのカリキュラム評価論が部分的かつバイアスがかかった状態で紹介されてきたため、1970~80年代を通したカリキュラム評価論の内的な連続性・非連続性は未解明であった。本研究のここまでの成果として1970年代のOECD-CERIのカリキュラム評価論を正確に把握することができたため、今後は1980年代のOECD-CERIのカリキュラム評価論へと転換していく論理を析出する予定である。また、ウェブ会議システムの普及が進んだことから、ウェブ会議システムを用いて、1970~90年代のOECD-CERIに関わった人物にインタビューを行うことを予定している。 第二の課題については、若狭高校のSSHカリキュラムにおける実際の指導・学習・評価のあり方を示すデータを収集する方法を考案する。現在計画していることは、SSHカリキュラムの一貫として行われている、協働探究会議(生徒が自身の研究について大学教員との間で質疑応答する会)や成果発表会がウェブ開催されるということを前提に、そこに積極的に参加し情報収集を行うという方法である。 ウェブ上での情報収集という方法に関しては、個人情報保護法や著作権法等、あらゆる法律やコンプライアンス違反がないよう、学内の倫理審査チェックも受ける予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ渦において、たとえばOECD-CERIの本部があるパリにインタビューに行くことができない、あるいは福井県立若狭高校にフィールドワークに行くことができない、参加予定の学会が延期になったりウェブ開催になったというように、主に旅費として計画していた予算を執行することができなかったため、次年度繰り越しが発生した。
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Research Products
(2 results)