2021 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける「六八年運動」の教育学的帰結と今日的課題
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19K14093
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
熊井 将太 山口大学, 教育学部, 准教授 (30634381)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、68年度運動の前史として、教育学と心理学との関係性を歴史的に跡付ける研究を行った。本科研の対象となる68年運動は、反権威を掲げた運動であったが、その結果として引き起こされたのが心理学ブームないしは心理主義化という動向であった。そこで、そもそもドイツにおいて教育学と心理学はどのような関係を切り結んできたのかについて、19世紀前半にまで立ち返り検討を行った。具体的に述べるならば、近代教育学の創始者と目されるヘルバルトの心理学を批判的に継承した、ヘルバルト派のシュトリュンペルに注目し、子ども理解の技術として心理学的知見が導入されていく過程を明らかにした。一般的な心理学史においてヘルバルトは前近代的な心理学の主唱者として、あるいは、ヴントによって超克される存在として位置づけられてきたが、ヘルバルト派における心理学受容の過程を追うことで、ヘルバルトからヴントに至るまでの思想的系譜が存在することを指摘した。また、そこからさらに20世紀前半における、子どもを見る視点の病理学化や教育学と優生学との接続といった問題にも言及した。 このような理論的検討を積み重ねた一方で、2021年度は予定していた渡独を実施することができず、当初予定されていたインタビュー調査を実施することができていない。そのため、68年運動の当事者たちの見方といった点については十分に検討ができておらず、継続して検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本科研の大きな特徴は、68年運動の実態や果たした役割について、東独および西独出身者の双方からの聞き取りを通して、その実像を描き出すことであった。理論的な検討については積み重ねてきたものの、渡独することが難しい状況が続き、そうした実証的調査を十分にできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
期間延長したことによって、改めて渡独してインタビュー調査を行う可能性を模索したい。それが難しい場合は、68年運動を対象とした文献を考察対象として、東独出身者と西独出身者との評価の違いや世代別の評価の違いなどに焦点を当てて検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた渡独が難しい状況が続き、旅費を大幅に残すことになった。改めて渡独の可能性を模索するが、難しい場合は、文献検討を中心にするため、物品費として利用する。
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Research Products
(1 results)