2022 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツにおける「六八年運動」の教育学的帰結と今日的課題
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19K14093
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
熊井 将太 山口大学, 教育学部, 准教授 (30634381)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育学 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通して、文献研究においては予定通り実施した。政治学や社会学領域における「六八年運動」をめぐる議論は、その影響力を冷静に受け止めようとするものであり、特に、現代の社会制度や規範の原因を「六八年運動」に安易に投げ返すことへの危険性などの示唆を得た。以上の視差を得て、「六八年運動」以降に、「規律と指導」という問題が、西ドイツおよび東ドイツのそれぞれでいかに議論されてきたかをレビューし、ブエブ論争を契機として、現在、ドイツ教育学の中で「教育的指導」の在り方が議論されていること、また、こうした動向はただドイツの問題のみならず、管理や指導といった問題を深く扱ってこなかった日本の教育学にも課題を提起するものであることを示した。さらに、その研究過程では、「六八年運動」が権威や規律といったものを排除しようとした結果、その間隙に入り込んできたのが心理学や精神医学の治験であり、1970年代頃のドイツでは「サイコブーム」が生じていたことが見えてきた。 そこで、特に最終年度においては、反権威主義の教育学が心理学と結びついていくプロセスに注目し、「教育の心理学化(Psychologisierung)」あるいは「心理主義(Psychologismus)」という視点から「六八年運動」の現代的帰結を探ることとした。しかし、「教育の心理学化」という問題は決して現代的な視座だけでは十分にとらえることができず、「六八年運動」よりもさらにさかのぼって、近代あるいは近代教育学の成立から検討しなければならないと考えた。そこで、近代教育学の一つの起点をヘルバルトに求め、ヘルバルト以来の教育学が心理学や精神医学とどのように結びついて戦後教育学へと連なっていくのかについて研究を進めた。
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