2019 Fiscal Year Research-status Report
Inquiry on the roles of teacher educators in fostering rationality and tolerance as the foundation of deliberation
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19K14099
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
山辺 恵理子 都留文科大学, 文学部, 講師 (60612322)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教師教育 / リフレクション / 哲学対話 / 哲学教育 / 熟議 / 民主主義教育 / プログラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトは、①論理的整合性と倫理的寛容性の両方を備えた熟議のあり方を探究し、そのために必要な②合理的判断力と多様な他者と共生する能力の開発を促す教育方法を、教師教育の分野に当てはめて考察するものである。 初年度に当たる2019年度には、二つのプログラム開発を進めた。 一つ目は、これまで行ってきたフレット・コルトハーヘンのリフレクション論研究に基づき、ゲシュタルト心理学やポジティブ心理学の知見を取り入れた教員養成課程向けのリフレクションの研修プログラムの開発を行った。演劇ワークショップの手法をも取り入れながら、人間の言動の論理的整合性の限界を見据えつつ、合理的判断により制御することが難しい部分をどのようにリフレクションし、より倫理的な選択を行えるようにするかを学習者とともに考えるプログラムを目指し、学部学生と留学生を対象とした授業に取り入れた。 二つ目は、近年国内で「哲学対話」と呼ばれて注目を集めている熟議の形態に注目し、そのもととなっているCoI(Community of Inquiry;探究の共同体)やP4C(Philosophy for Children;子どものための哲学)の理念や実践例、手法について米コロンビア大学の取り組みを中心にヒアリング調査を行った。また、この調査で得られた知見をもとに、論理的思考能力の発達や哲学的な思考枠組みの習得だけではなく、「多様な他者と共生する能力」の発達にも貢献し得る哲学対話のワークショップの開発を目指し、いくつかのプログラムをデザインし、学部学生、留学生、及び学校教員を対象としたワークショップを複数開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、熟議を取り入れた教師教育プログラムの事例の視察及びその関係者へのヒアリング調査の実施にあたって、従来より研究への協力を賜っているユトレヒト大学のフレット・コルトハーヘン名誉教授やハワイ大学のトーマス・ジャクソン教授の周辺で展開されている事例を探すことを計画していた。しかし、一つには、オランダへの海外出張は年度末に予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い断念せざるを得なかった。ハワイ大学周辺の実践については、そのもととなっているP4C(Philosophy for Children;子どものための哲学対話)と呼ばれる形式の実践を体系立てた故マシュー・リップマン教授の理念により近い実践に関する調査から始めた方がそれぞれのプログラムの特性に関する考察が深まると推測し、コロンビア大学のミーガン・ラヴァーティ教授らへのヒアリング調査を初年度に行う方針に途中で転換した。結果、視察・ヒアリングの実施数は減ってしまったが、当初想定していたよりも分析対象となるプログラムを幅広く集めることはできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、アメリカにおけるCoI(Community of Inquiry;探究の共同体)関連の教員研修2件に参加することを予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、すでにその両方の中止が発表された。現在の社会情勢を鑑みると、当面はオンラインで参加できる研修の視察に留め、文献研究に重点を置かざるを得ないと予想している。また、プログラム開発をするに当たっても、オンライン・プログラムの形でのデザインを意識する。
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Causes of Carryover |
使用額変更の理由は、年度末の時期に実施予定だった海外実践の視察・ヒアリング調査のための出張を、新型コロナウィルスの感染拡大により断念せざるを得なくなったため。 今後の使用計画としては、旅費の支出が当面の間なくなる分、オンライン環境で実施するワークショップの開発に必要なパソコン関連備品の購入、視聴覚教材を含むワークショップ用の教材開発を行うための資料および必要備品の購入、そして、文献研究に必要な書籍類の購入に充てる。一方で、状況が落ち着き視察等が実施可能になった場合には、できる限り当初の計画に近づける形で再度計画の見直しを行う。
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Research Products
(2 results)