2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Transformation of Concept of Nation-State in Education Principles between Pre-War and Post-War.
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19K14103
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
金井 徹 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (00532087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教育理念 / 民族国家 / 三項構造理論 / 戦後教育改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の第一段階として、戦前戦中期から戦後改革期にあたる1930年代後半から1940年代中盤における知識人や文化人を中心とした民族国家の論理構造と、教育理念に関する言説の関連を明らかにすることを企図して、関連する先行研究の収集と整理を進めるとともに、関連する資料の収集のための調査を実施した。特に戦後日本の教育理念の内容に大きな影響を与えたとされる京都学派関連の著作及び先行研究の収集と整理、そして、戦前戦中期の日本における国家観に強い影響を与えたと考えられる国体論に関連する著作及び先行研究を中心に収集と整理を行った。また、本研究を遂行するために、日本教育学会(8月)、日本教育行政学会(10月)、日本思想史学会(11月)等の各種学会において情報収集に努めた。さらに、戦後改革期に教育における国家をどのように位置付けようとしたのかを検討するために、国立国会図書館の憲政資料室を利用してGHQ文書の収集を開始した。現在、収集した資料をもとに、戦前戦後を通して、日本の教育における民族国家観の系譜をどのように捉えることができるのか、各論者や時期ごとの民族国家の論理構造や議論の構図には、どのような違いがあったのかについての分析に着手している。本年度の研究成果の一部は、東北教育学会第77回大会(3月)の自由研究発表において「戦後の教育理念における民族国家に関する思想史的研究-旧教育基本法をめぐる言説を中心に-」と題して発表登録を行った。そこでは、近年の先行研究において指摘されている旧教育基本法をはじめ戦後の教育理念を枠づけてきた京都学派の個-国家(特殊)-人類(普遍)或いは個人-国民-世界市民という三項構造理論と戦後の教育理念における民族国家との関連について分析するための予備的な検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の前半は、戦後の教育理念の内容に大きな影響を与えた京都学派関連の著作及び先行研究の収集と整理、そして、戦前戦中期の日本における国家観に強い影響を与えたと考えられる国体論に関連する著作及び先行研究の収集と整理を進めるとともに、GHQ文書の収集を開始することができた。しかしながら、本年度の後半は、感染症の影響により国内の移動も制限されて資料収集先も閉鎖となり、年明けに予定していた資料収集のための調査を実施することができなかったため、特にGHQ文書の収集が想定通りに進まなかった。そのため研究の進捗状況としては、本年度当初の計画よりやや遅れていると判断せざるを得ない。現在は、収集した資料のデータ化と分析を進めるとともに、研究成果の発表に向けた準備に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の後半は、年度当初に予定していた資料収集のための調査を実施することができなかった。しかし現在は、移動の制限も徐々に解除されてきている状況にあるため、今後は、収集した資料の整理と分析及び研究成果の発表に向けた準備を進めるとともに、8月以降を中心に資料収集のための調査実施を計画している。今後はとくに戦後改革期からサンフランシスコ講和条約発効前後の1940年代中盤から1950年代中盤にかけての民族国家の論理構造と、教育理念に関する言説の関連を明らかにすることを企図して、戦後の政策文書や教育理念に関連する資料の収集と分析を進める。とりわけ戦後日本の教育理念における国家観に大きな影響を与えた京都学派の国家観に着目して、その戦後における民族国家の論理の変容について検討を行う。加えて、戦後の占領政策下を中心としたGHQ等の教育における国家の位置付けに関する認識の検討、そして、講和独立前後の上原専禄をはじめとする革新ナショナリズムにおける民族国家の論理の検討を計画している。以上のような研究計画の遂行によって、戦後日本の教育理念における民族国家の位置づけとその変容について検討を進める。
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Causes of Carryover |
感染症の影響により国内の移動が制限され資料収集先も閉鎖となったため、年明けの3月に計画していた資料収集のための調査実施が不可能となったことにより次年度使用額が生じた。移動の制限も徐々に解除されてきている状況にあるため、次年度の8月以降を中心に資料収集のための調査実施による使用を計画している。
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Research Products
(1 results)