2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on the Transformation of Concept of Nation-State in Education Principles between Pre-War and Post-War.
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19K14103
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
金井 徹 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 准教授 (00532087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 務台理作 / 戦後教育理念 / 民族国家 / 個人 / 世界 / 三項構造理論 / 丸山眞男 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究の第二段階として日本における民族概念と教育理念との関連の分析を企図したが、感染症の影響により国内外の移動が大きく制限されたため資料収集のための調査という点で当初予定していた活動を十分に行うことが出来なかった。そうしたなか、戦後教育理念における民族国家観に関連する文献及び資料の収集と整理を進め、その研究成果の発表を中心に活動を行った。文献の収集に関しては、戦後教育改革に関連する文献、民族の問題に関連する文献、国体論に関連する文献、日本文化論に関連する文献、京都学派に関連する文献、ナショナリズムに関連する国内外の文献収集に努めた。研究成果の報告については、日本教育学会第79回大会(2020年8月)における研究成果の発表では、戦後の教育理念においても民族国家としての日本という捉え方を重視した務台理作の教育理念における個人、国家、人類について、戦前戦後の意味変容の解明に取り組んだ。また、東北教育学会第77回大会(2021年3月)における研究成果の発表では、戦前期(1930年代後半)に個、国家(特殊)、世界(普遍)という三項構造理論について述べた務台理作の『社会存在論』(1939)の内容の検討と、その務台の『社会存在論』の内容に対する丸山眞男の『国家学会雑誌』第五三巻九号(1939年)における批判論について、丸山が何を批判し、何を批判しなかったのかを中心に分析を試みた。務台を含む京都学派の三項構造理論が教育基本法をはじめとする戦後教育理念を枠づけてきたという指摘を踏まえると、こうした作業は、丸山による務台の『社会存在論』への批判論を、戦後教育理念への批判論として読み直すという、これまでの先行研究では、ほとんど試みられてこなかった観点から、戦後日本の教育理念が抱えてきた問題の所在を明らかにすることにつながるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に引き続き、感染症の影響により国内外の移動が大きく制限されたため、国立国会図書館の憲政資料室における資料収集をはじめ、資料収集のための調査という点では当初予定していた活動を十分に行うことが出来なかった。その一方で、日本を中心とした民族の問題に関わる文献、それに関連して国体論に関する文献、日本文化論に関連する文献、京都学派に関連する文献、ナショナリズムに関連する国内外の文献の整理及び分析を進めることができた。研究室内での研究活動が中心となったことで、これまで収集した資料や文献の整理や分析にある程度の時間を割くことができ、そのことが本年度における複数回の研究成果の発表につながった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、全体を通して感染症の影響により国内外の移動が大きく制限され、当初予定していた資料収集のための調査を十分に行うことが出来なかった。今後も感染症の影響により国内外の移動が制限され、資料収集のための調査という点では十分な活動が展開できない可能性も考えられる。そのため、遠隔でも入手可能な資料収集を進めるとともに、収集した文献や資料の整理および分析に一層の時間を割いて研究成果の発表を行っていく。とりわけ京都学派を中心とした日本における民族国家観の戦前戦後の意味変容の分析、そして、戦後の教育改革や教育政策との関連において、民族国家観がどのような影響を与えたのかという視点を中心に、資料の分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続いて感染症の影響により国内外の移動が大きく制限され、当初予定していた資料収集のための調査が実施できなかったり、研究成果の発表の場としての教育関連学会がいずれも遠隔での開催となったために旅費の支出が大きく減少した。今年度も前半を中心に感染症の影響は残ると考えられるため、遠隔で入手可能な文献及び資料の収集に一層重点を置いて取り組んでいく計画を立てている。また、感染症の影響が解消された場合には速やかに資料収集のための調査を実施する計画である。
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Research Products
(2 results)