2019 Fiscal Year Research-status Report
Kindergarten in the American Progressive Education Era; A Historical Study on Connection to Elementary School Curriculum
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19K14116
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
山本 孝司 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (00399768)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ幼稚園運動 / エリザベス・ピーボディ / スーザン・ブロウ / ウィリアム・ハリス / 幼児学校 / フレーベル主義 / 公立学校幼稚園 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の文献の収集と分析を中心に研究を進めた。研究成果は、次の三つである。 第一に、エリザベス・ピーボディ(Elizabeth P. Peabody)を中心に、幼児学校に対する批判的克服の実践としての幼稚園教育の展開と、セントルイスを起点としハリス(William T. Harris)とブロウ(Susan E. Blow)によって設置され展開した公立学校幼稚園における教育との距離の中に、彼女の幼稚園教育思想の独自性を見出した。ピーボディの立ち位置は、学校とは区別されるところの「教育」(家庭的養護を含む教育)でありながら、しかも学校のもつ教育的側面を否定することなく、両者の融合を求めた点で、幼稚園を学校化する路線とは異なっていた。 第二に、ピーボディ幼稚園教育思想における幼稚園と家庭、学校との位置関係について探り、アメリカ幼稚園運動草創期から拡充期にかけて幼稚園に期待された役割の変遷について明らかにした。南北戦争後のアメリカの幼児教育において幼稚園は、幼児学校のもつ家庭代替機能に対する批判的克服として登場したが、1870年代以降は公立化されることで、初等教育の下部組織として初等教育の準備機関としての性格を強めていくことになった。この流れは、19世紀末から20世紀初頭にかけての進歩主義教育運動のなかでさらに加速する。心理学を基礎とする児童研究やそれを背景にしたデューイ(John Dewey)やキルパトリック(William H. Kilpatrick)の教授理論は、ヒル(Patty Smith Hill)らによって幼稚園教育理論の中にも積極的に取り入れられ、「学校」としての幼稚園の位置づけが鮮明になった。 第三に、公立学校幼稚園の普及に伴う幼稚園の公立化の傍流にあったキリスト教教会による慈善幼稚園運動に焦点を当てて、その流れの中に公立幼稚園とは異なる幼稚園機能について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料収集のためアメリカへの渡航を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で実施することを見合わせた結果、資料の入手に遅れが生じている。とりわけ、進歩主義教育期における幼稚園関連文献の入手が遅れており、今後の資料収集方法の再検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き関連する文献の収集と分析を中心に研究を進める。19世紀末のアメリカ進歩主義教育の生起と展開における、幼稚園教育をめぐる理論、実践上の保守派と革新派の対立に焦点化し、幼小接続に関連づけて研究を進める。幼稚園から初等学校、初等学校から幼稚園への影響について、恩物とオキュペーション等の遊具や活動、それらを取りまくカリキュラムを中心に、保守派、革新派双方の論点を整理し検討していくことが今後の課題となる。特に進歩主義幼稚園における実践理論の考察を通して、幼稚園教育から初等教育への影響の一端としての自己活動を基調とする学びの共同の源流を探る。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響で当初予定していた資料収集を目的としたアメリカ渡航を自粛したため、同目的の費用を次年度予算に計上した。
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Research Products
(5 results)