2023 Fiscal Year Annual Research Report
Immigrants and Social Integration in Germany: Focusing on the "Difficulties" of the School Orientation
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19K14120
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
布川 あゆみ 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 准教授 (80799114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 福祉・ケアとの接続 / ドイツ / 終日学校 / 難民 / 教育保障 / 教育の変革 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる令和5年度は、5年間にわたる研究期間の成果をまとめ、発表することに重点を置いて取り組んだ。まず、6月に開催された日本比較教育学会にて、前年度現地調査結果に基づいて、ドイツにおけるウクライナ難民の受け入れと学校変容をテーマに発表を行った。また9月には日本宗教学会公開シンポジウムにて、ドイツにおける宗教科とイスラームをテーマに発表を行った。宗教教育の分野では、多様な背景をもつ人々との統合ではなく、「共存」が目指されているという気づきは、本研究課題を進めるうえで大きな気づきとなった。 問題関心が改めて明確となった状態で、2月下旬から3月初旬にかけて、現地調査を行うことができた。前年度、調査協力を得られた学校を再度訪問し、前年度からの変化について重点的に聞き取りや観察を行った。 前年度調査した時点では、急増したウクライナ難民の子どものためのクラスが新規に設置されていたが、今回調査した際には、ウクライナ難民の子どもは少数で、ウクライナ以外からの難民の子ども(アフガニスタン、シリア、ソマリアなど)やEU圏内から新規に流入してきた移民が主に在籍していた。ドイツ社会において、約115万人のウクライナ難民の受け入れが進んでいるが、ウクライナ難民以外にも、世界各地からの難民、そして移民を受け入れながら、ドイツ社会が構築されていることを、当該クラスの構成員の変化からもうかがうことができた。 これまで移民の視点から社会統合をめぐる問題を検討してきたが、難民の受け入れという視点を新たに含んだことで、学校と福祉やケアとの接続が教育保障の観点から重視されていることが見えてきた。従来、授業(のみ)を行う「教授学校」として位置づいてきたドイツの学校は、教育と福祉・ケアの拠点として、学校を位置づけるという過渡期にあることが、学校の終日化に着目するなかで見えてきた。大きな教育の変革になることが考えられる。
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