2022 Fiscal Year Research-status Report
A New Educational Support From The Situation Of The Acculturation of the Non-Japanese Children in Japan
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19K14121
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
MATSUDA DEREK 群馬大学, 国際センター, 講師 (90817272)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ルーツからルートへ / 文化的アイデンティティ / ハイブリッドアイデンティティ / 日系ラテンアメリカ人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度には、米国に渡航して第二次世界大戦中にペルーから米国に移動した日系人に直接インタビューをすることができた。その成果を国際学会(Scientia Moralitas Conference)に査読付きで論文を投稿することができた(Derek K. Pinillos Matsuda (2023) People Who Move among Cultures and Languages: Japanese Descendants in the U.S. from Peru, Scientia Moralitas Conference Proceedings, pp. 47-55. )。また、異文化間教育学会にて"Minority and Cultural Identity- A case of Japanese Peruvians in the U.S."のタイトルで発表。新型コロナウイルスの影響もあり、本研究の目的を達成するために当初、予定していた米国、ブラジル、ペルーでの調査を米国のみとし、三つ以上の国の移動の経験をもつ日本つながりの人々への質的調査を実施している。これは、近年の移動を捉えるのに必要な過去の経験を研究し、彼らがどのような文化的アイデンティティを構築し、現在アメリカ社会で生きているのかを明らかにするためである。そうすることで、日本を含む他の国に移動した子どもを支える教育コミュニティの創造に大きく寄与するものだと考えている。また、本研究の成果は、日系人に関する研究会などでも共有しており、これまであまり知られていなかった Hidden Historyとして、紹介している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界情勢や新型コロナウイルスの影響で、当初計画していた調査が困難となり、期間通りに研究をまとめるために調査対象の変更を余儀なくされた。しかし、調査対象となったコミュニティはこれまでに多様な分野においてあまり着目されてこなかった人々であり、彼らのたどってきたルートを学術的に残すことで、移動する人々がどのような形でホスト社会に定着していき、子どもを教育していくのかを探るのに有意義な調査であると考えている。2022年度は米国に渡り、5名の当事者と3名の関係者にインタビューすることができた。子どもの視点で戦中のアメリカの強制収容所の様子を語ってくれたが、当初想定されていた苦しい経験や自由のない生活への不満とは反対にとても快適な生活を送っていたという証言がほとんどだった。また、収容所を後にした彼らの生活は非常に苦しい労働環境、そして経済的な理由により高等教育機関での教育を受けることができなかった経験について語られた。異国の地での両親の様子や、現地の米国日系人との関係などについても共有された。また、両親がとった(取らざるを得なかった)教育戦略についても数々の言及があった。加えて、日本に対するイメージや考えに関する発言もあり、現在移動する人々とその子どもの教育に応用できる部分が多くみられた。 対象者の証言のおかげで、本研究の当初の目的であった「子どもが自国、日本、そして第三の国への『移動』を繰り返すことによりどのような文化へ尿がみられるか実態を探るとともに子どもが受ける教育と文化変容の関連性について把握すること」が可能となり、現在の対象者の「移動」は必ずしも物理的な移動ではないが、言語間、文化間を移動する人々であることから、十分に本目的を達成することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度において、異文化間教育学会、日本比較教育学会において調査および研究の成果を発表する予定である。8月にはミネソタ大学にて日系人研究を行っている研究者との意見交換および今後の研究の発展について話し合い、他の国の日系人に関する研究を行っている研究者とともにオンラインによるシンポジウムの開催の可能性について探る。また、シカゴおよびサンフランシスコでの質的調査の続きを行い、対象者のその後の生活やその次の世代へのインタビューを試みる。また、今回の調査、研究結果を応用し、現在日本に住むペルーにルーツを持つ人々の文化的アイデンティティの実態を量的調査を通じて探る。当初の研究対象者だった日本に住む南米にルーツを持つ人々の観点から、1. 日本において学習機会が平等に提供されていると感じるか、2. 日本において「移動」をすることが平等な学習の機会の妨げとなっているのか、3. 日本において自分自身の文化的な背景により、教育を受ける際に不平等を感じることがあるのか、を明らかにしていくことを試みる。本研究では、様々な困難な状況から研究対象者を変更したが、当初の目的を達成するのに十分な調査ができている。最終年である2023年度には、その研究成果をまとめ、日本語、英語、スペイン語で発表できるように準備を進める。当初は、ポルトガル語での成果発表も予定していたが、今回の研究対象者が英語圏、スペイン語圏に限定されたため、ポルトガル語では研究成果の概要のみを発表することとする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのため、しばらくの間は海外渡航ができなかったため、予定をずらして渡航をしている。そのため、2023年度にも米国へ渡航し、研究を継続する予定である。
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Research Products
(2 results)