2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and Empirical Analysis on Impact of Armed Conflict on School Effectiveness Mechanism
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19K14122
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内海 悠二 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (70824001)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 紛争と教育 / 教育の効果分析 / アフガニスタン / 東ティモール / 学校効果研究 / 難民・移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、東ティモールを事例とした研究については1.データ収集及び2.過去に実施した類似研究の範囲を更に拡大させた分析を行った。アフガニスタンを事例とした研究については3.収集データの分析を行った。 1. 2019年8月に他の研究費で東ティモールに渡航し、分析に使用する2018年度学生個人データ(EMISデータ)を教育省から取得した。また、2020年2月には再度東ティモールに短期間渡航し、2019年度EMISデータの収集状況を確認するとともに、東ティモールで活動する国際NGOや国連職員と面会し、首都及び地方での質的データ採取実施への支援を要請した。 2. これまでに東ティモールで収集したデータに加えて、世界銀行が2001年に当該国で実施したTimor-Leste Living Standard Surveyデータを新たに取得・利用し、1999年に発生した紛争中に難民として国外に脱出した者と紛争が特に激しかった地域に居住していた者との相関性を確認することで、以前に東ティモールを事例として行った教育効果に対する紛争経験の長期的影響の分析結果に対して難民及び移民という観点から追加的な意味を考察した。 3. アフガニスタンを事例とした分析では、識字教育プロジェクト実施前後に収集した各データの学生約2万人についてファジーマッチング関数による照合を行った。また、結合データを用いて学生個人と家庭の特性を考慮に入れた傾向スコアを計算し、当該傾向スコアを重み付けの補正値として分析モデルに組み込んだ差分の差分分析を行った。分析結果からは、教育期間中の紛争経験は確かに識字教育効果に負の影響を与えていることが確認できた。また、その負の影響の大きさは都市と地方において大きく異なるが、その異なる要因の一つとして地方において女性が紛争による著しい制限を受けているであろうことが推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年3月に予定していた米国における学会発表及び識字教育専門家等との会合が新型コロナウイルス感染症による出入国制限によってキャンセルとなったことに起因して国際学会での発表及び必要情報の入手に多少の遅れが生じている。また、東ティモールを事例とした大規模データの収集に関しては東ティモール教育省の担当課によるデータ収集業務に遅れが生じているため、2019年度の学生個人データの取得には未だ至っていない。 この点、東ティモールについては2012年から2018年までの学生個人データ群については既に取得済みであり、当該データ群を利用した分析は実施可能であることから現在データ整理を行っている。また、関連する他の入手可能なデータと上述のデータ群を同時に利用して、紛争経験が教育効果に与える影響に難民・移民の観点を取り入れた分析を現在実施中である。 アフガニスタンを事例とした研究については、上記の国際学会での報告が遅れている以外では概ね順調に進展している。データ整理及び基礎的分析は既に実施しており、現在、紛争経験の影響に関する詳細なメカニズムを解明するための更なる分析を実施しているとともに、投稿論文の草稿についても同時に執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症による出入国制限が解除されることを想定しているが、今年度8月~9月の間に東ティモールに渡航し、2019年度EMISデータ及び2019年度以前の全国学力試験データを東ティモール教育省EMISデータベース及びカリキュラム課データベースより抽出することを予定している。また、現地滞在中にディリ市内及び地方都市に渡航し、紛争経験が教育効果に与える長期的影響の因果関係を説明するための補完的な質的インタビューを実施する予定である。 東ティモールを事例とした研究については、過去に実施した分析を難民・移民の観点をも取り入れて更に拡張させた分析結果を共著による英語書籍のチャプターの一つとして今年度中に出版できるよう執筆を進める予定である。 アフガニスタンを事例とした成人識字教育効果に対する紛争の影響に関する分析については、分析結果を国際学術雑誌へ投稿するために現在分析及び執筆中であり、今年中にアクセプト、来年中に掲載できるように進めていきたい。更に、可能であればアフガニスタンで収集したデータの一部を使用し、類似テーマであるが切り口を初等あるいは中等教育に移した分析を行い、来年度中に国内の学術雑誌に投稿できるように執筆を進めたいと考えている。 学会発表及び研究会議については、今後も継続的に国内、海外の学会において成果を報告し、関係する専門家や実務家と議論を重ねることで研究分析を改善していく予定である。2020年3月に米国において面会する予定であったユニセフ職員及びアフガニスタン識字教育プロジェクトの専門家との会議、及び北米比較・国際教育学会(CIES)等での国際学会における報告については、今年度の夏季・春季休業期間のいずれかにおいて実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年3月に渡航予定であった米国への国際学会報告及び識字教育専門家等との会合が新型コロナウイルスによる出入国制限によってキャンセルとなったことが次年度使用額が生じた理由の一つである。当該学会(あるいは代替できる国際学会)への報告及び米国における識字教育専門家との会合は2020年度の夏季大学休暇中あるいは春季大学休暇中に実施する予定である。 また、2019年10月に交付決定された独立基盤形成支援費が2019年度に一括して助成され、当該研究費を3年間の現行研究期間中にある程度分散して使用することを予定していたために次年度使用額が生じた。当該支援費の残額については翌年度及び最終年度において当初の計画通りに使用する予定である。
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