2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and Empirical Analysis on Impact of Armed Conflict on School Effectiveness Mechanism
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19K14122
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
内海 悠二 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (70824001)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 紛争と教育 / 教育の効果分析 / アフガニスタン / 東ティモール / 学校効果研究 / 難民・移民 / コミュニティ / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
東ティモールに関する研究として、1999年に発生した紛争が難民・国内避難民の教育効果に与える影響に関する分析、アフガニスタンに関する研究として、社会調査データの取得、紛争が成人識字教育に与える影響の分析、および初等教育における紛争とコミュニティ・レジリエンスに関する分析を行った。具体的には以下の通りである。 1.前年度からの継続として、東ティモールの紛争期間別の教育状況の変化を観察することで紛争が教育に与える影響と1999年に発生した紛争経験が2009年時点の中等学校全国試験結果に与える影響について分析を行った。分析結果は英文学術書の担当章で発表した。 2.アフガニスタン教育省の研究協力者を通して、アフガニスタン中央統計局が保持する社会調査(NRVA 2011, 2014)の2次データを取得した。 3.前年度からの継続として、アフガニスタンにおける識字教育プロジェクトが確かに参加者の識字能力を向上させること、紛争がその向上を阻害させ、地方在住者及び女性に対してより強い阻害要因となることを確認した。現在、当該分析結果を海外学術雑誌に投稿中である。 4.アフガニスタンにおける2005年~2007年に発生した紛争を事例として、紛争が子供たちの教育へのアクセスにどのように影響を及ぼすのか、また当該(負の)影響をコミュニティ活動がどのように緩和していくのかについて分析を行った。分析にはアフガニスタンNRVA調査2005及び同調査2007の個人データ、及びウプサラ紛争データベースプログラムの紛争データを使用し、アフガニスタン全土の紛争波及効果をカーネル密度推計によって導き出したうえで、差分の差分分析による紛争の効果を推定した。更に、分析モデルにコミュニティ活動変数を交互作用項として追加することでコミュニティ・レジリエンスの有効性を確認した。現在、当該分析結果を海外学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に予定していた東ティモールへの渡航は新型コロナウイルス感染症による出入国制限によってキャンセルとなり、東ティモール教育省において収集した2019年度の学生個人データの取得ができていない。また、東ティモール国立大学における紛争に関する資料収集と関係者への現地インタビューを実施できていないことも研究が遅れている理由である。 ただし、東ティモールにおける2012年から2018年までの学生個人のLongitudinal Dataは既に取得済みであり、紛争発生前後のコーホート別の学生の教育歴に関する分析を継続している。また、アフガニスタンを事例とした研究については、現地の研究協力者より社会調査データを取得できたことから、当該データ群を利用して紛争経験の影響に関する詳細なメカニズムを解明するための分析を実施している。関連論文2本が現在査読中であり、論文1本を執筆中である。 2020年度は国内・国際学会がオンラインで実施されたため、国内に滞在しながら学会報告を行うことができたが、2020年度に米国で予定していたアフガニスタン識字教育・初等教育専門家との面会及び資料収集は未だ実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症による出入国制限が解除された場合には、今年度8月~9月あるいは2022年3月に東ティモールに渡航し、2019年及び2020年度のEMISデータと全国学力試験データを東ティモール教育省より入手することを予定している。また、2020年度に実施を予定していたディリ市内及び地方都市における質的インタビューを実施予定である。 東ティモールを事例とした研究については、2012年から2018年までのEMISデータを用いて、紛争経験グループと紛争未経験グループの初等・中等教育学生の教育効果を縦断的に分析することで教育に対する紛争の長期的な影響を推定する予定である。 アフガニスタンを事例とした紛争の影響に関する分析については、紛争下における紛争が教育に関する短期的影響の分析を継続し、個人の固定効果を投入した現在分析中の研究を継続し国内学術雑誌への投稿を目標とする。また、成人識字教育データを利用して、教師・教室レベルの違いを考慮したマルチレベル・差分の差分分析を実施し、海外学術雑誌への投稿を目指したい。 学会発表及び研究会議については、継続的に国内、海外学会で発表していく予定でる。また、状況が許せば2020年度に米国で面会予定であったユニセフ職員及びアフガニスタン識字教育プロジェクトの専門家との会議及び資料収集を実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの発生に伴う渡航制限により、当初計画していた2度の東ティモールへの渡航と現地調査、及び前年度に行う予定であった米国への渡航(専門家からの資料収集等)が実施できていない状況である。これらの現地調査は渡航制限が解かれ次第、今年度中に実施したいと考えている。 また、独立基盤形成支援費での研究室の設備購入等が予定よりも遅れているため、今年度に実施したいと閑雅ている。
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