2020 Fiscal Year Research-status Report
児童養護施設の文化構築に関する教育社会学的研究―職員と保護者の交流に着目して―
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19K14140
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Research Institution | Shiseikan Hall University |
Principal Investigator |
山口 季音 至誠館大学, ライフデザイン学部, 准教授(移行) (70774230)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 児童養護施設 / 児童養護施設職員 / 家庭支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度における研究計画では、児童養護施設職員への本格的な調査を予定した。研究計画の初年度に近畿圏にある児童養護施設から全面的な協力を得ることができたため、その施設での継続的な調査を行うことができた。 調査実施の際には、とくに児童養護施設における家庭支援の焦点と実態に着目して調査を行った。その結果、施設職員は子どもの保護者との関わりを通して、親と子どもの交流が「イベント的」で、家庭復帰後の日常生活のためのものになっていないことに気づいた。そして、「イベント的ではない」交流がなぜ重要なのかを保護者に伝える手段を模索していた。また、保護者と職員との関係について、家庭支援において受容的に共感するだけではなく、能動的な共感していくことで保護者との長期的な関係が構築されると感じていた。本調査結果は、第72回日本教育社会学会大会において、「児童養護施設職員の家族関係再構築に対する意味づけの変容」と題して報告を行った。 一つの児童養護施設への継続的調査によって、家庭支援の一時的な様相だけではなく、保護者や子どもの変化によって支援が左右される様子をうかがうことができると考えられる。今後は、このような変化に着目して調査を行う予定である。なお、本調査の結果は、それまでの成果と合わせながら分析を行い、学会大会で発表・論文投稿する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、やや遅れている。とくに、出張が制限され、国内外で発表する予定であったがほとんど実施できず、調査においても協力施設と予定していた調査の回数を実施することができなかった。 しかし、令和2年度の研究計画において優先課題であったインタビュー調査は、近畿圏にある児童養護施設の全面的な協力を得て、本研究課題の関心に合わせた有意義な調査を実施することができている。また、その結果を前年度までの調査結果とあわせて、日本教育社会学会(オンライン)で発表するなど、おおむね順調に研究を遂行することができた。このように、予期せず状況により遅れている部分もあるが、一定の成果を得ることはできている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和3年度には、引き続き児童養護施設職員に対して調査を実施する。一つの児童養護施設での継続的調査の利点を生かし、数年単位での支援の変化に焦点を当てて分析を行う予定である。そして、その結果を国内学会でオンライン発表を行う。また、その成果を論文としてまとめ、教育・福祉関連の国内学会の学会誌に投稿する。 現在は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、調査のための出張が制限されていることである。本研究の完成には、施設職員への調査が必要不可欠であるため、オンラインでの調査を調査協力者に打診するなどを試み、研究計画が遂行できるよう検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画では、調査による出張費に多くを割いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって出張が制限されたことや、アルバイトを雇えなかったために次年度使用額が生じた。 今後の使用計画として、今後も出張の制限が予想されることから、オンラインでの調査に必要な機材の購入やテープ起こしの外部委託、アルバイトの雇用などによって円滑の研究を進められるよう予算を使用する予定である。
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