• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2020 Fiscal Year Research-status Report

日本近代の教育と罰をめぐる制度・言説・実践の歴史社会学

Research Project

Project/Area Number 19K14141
Research InstitutionShokei University

Principal Investigator

水谷 智彦  尚絅大学, 生活科学部, 助教 (00791427)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords罰 / 校則 / 停学 / 退学 / 学校管理 / 儀礼 / 規律 / 歴史社会学
Outline of Annual Research Achievements

令和2年度は、明治期に出版された「学校管理法書」に記された罰の方法に焦点化し、教師がいかなる方法で児童を罰するべきと要請されたのかを解明することを中心に、以下①~③のように学会での報告、あるいは研究成果の論文化をおこなった。
①日本の近代学校成立期にアメリカ・イギリスから導入された学校管理論に着目し、教師による生徒への懲戒の方法やその効果がいかに論じられたのかを明らかにしようと試みた。その結果、英米の管理論では、それぞれ懲戒に期待される効果や方法が異なることがわかり、また日本は双方の懲戒論を摂取しながら、独自の処罰論を構成していた可能性が示された。
②日本の近代学校成立期にアメリカ・イギリスから導入された学校管理論に着目し、校則の原理原則がいかに論じられたのかを明らかにしようと試みた。その結果、アメリカでは校則を法に見立て、生徒の権利義務を定める考え方が見られたのに対して、イギリスでは生徒の権利義務ではなく、教授の遂行に必要なルールのみを校則にすべきだという議論が見られた。その日本への影響について、仮説を示した。
③明治期「学校管理法書」の停学と退学処分に関する記述から、同書の著者らが、いかに近代学校秩序を創出、維持すべきと論じたのかを解明しようと試みた。この作業から、停学には、学校に所属すべき児童とはどういう者かを他の児童らに認識させる機能が、退学には、矯正不可能な児童の存在を周知せずに追放することで、学校教育が前提とする個人の変容可能性という信念を維持する機能が与えられていたことが明らかとなった。
①は日本教育学会第79回大会にて報告、②は日本教育社会学会第72回大会で報告をおこなった。③については、令和3年1月末に論文投稿をおこない、査読結果を待っているところである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

令和元年度の研究実施状況報告書における今後の研究の推進方策に記載したとおり、罰の方法に関する研究を発展させるため、日本教育学会での学会発表をおこなうことができ、教育社会学のみならず、教育学、教育史学の研究者に向けて広く研究報告ができたことは大きな意義をもつと考える。また、これまで蓄積してきた罰についての研究と平行して、当初は予定していなかった校規校則論の言説調査・分析をおこない、日本教育社会学会で報告できたことは、本研究課題に広がりをもたせる意義をもつものと考える。さらに今年度の研究の重要な柱である「学校管理法書」の罰の方法に関する研究については、これまであまり注目されてこなかった停学と退学処分に着目し、学校秩序の形成という観点から分析をおこない、論文を執筆できた。現在、その論文については査読結果を待っている状況であるが、論文を執筆できたことは、大きな前進だといってよいと考える。以上より、当初予定していた生徒指導学会での報告はできなかったものの、順調に今年度の研究目的として掲げた実績を蓄積できた他、次年度に向けての論文執筆をおこなうことができた点で、進捗状況は「おおむね順調に進展している」ものと考える。

Strategy for Future Research Activity

令和2年度までの調査研究の進展や研究成果を基礎として、今後の研究の推進方策を以下に述べる。令和3年度は、本研究課題の最終年度となるため、これまでの研究成果を統括する博士論文を執筆し、提出することを第一の目的とする。本研究課題では、明治期の学校における罰の制度、および言説を収集、分析して論文を執筆、または学会報告を蓄積してきた。本研究は罰の機能という視点から、学校での罰の制度や言説を分析するという新たな試みである点でオリジナリティをもつと同時に、日本の学校秩序の創出と維持、教師像、あるいは教師生徒関係の形成という面でも重要な意義をもつものであると考えている。
以上を踏まえ、まずはこれまでおこなってきた日本近代の教育と罰の歴史社会学研究の目的と意義について、8月に開催される日本教育学会第80回大会(オンライン開催予定)にて報告をしたいと考える。この発表では、これまでの研究成果を教育社会学のみならず、教育学、教育史学の文脈に位置づけ、その意義についての考察を深めることを目的とする。
また、9月に開催される日本教育社会学会第73回大会(オンライン開催予定)においては、令和2年度に実施しはじめた英米学校管理論の日本への導入過程の探究をさらに深めた報告をおこなう予定である。この研究報告は、日本の近代学校での罰の成立過程に直接的に関わるものであり、博士論文の一部を構成するものであると考えている。
上に示した2つの学会報告をおこない、これらを統合して令和3年度中に博士論文を執筆、提出する。以上が、今後の研究の推進方策である。

Causes of Carryover

25万円近くの次年度繰越額が発生した理由は主に関連学会での報告、あるいは研究会がコロナウィルスの影響によりオンライン開催になったことが挙げられる。今年度は関西学院大学での開催を予定していた日本教育社会学会、および神戸大学での開催を予定していた日本教育学会での発表をおこなったが、いずれもオンライン開催となった。そのため、旅費を執行する必要がなくなったことが大きな理由のひとつである。また関連する研究会への参加もオンラインでの実施により旅費支出がなくなった。さらには、資史料調査等も実施できなかったため、25万円の次年度使用額が発生したと考える。
令和3年度は今後の研究の推進方策に記したように、これまでの研究業績を総括した博士論文を執筆予定であり、またそれに関連した学会報告を日本教育学会、および日本教育社会学会にておこなう予定である。これらの学会はコロナウィルスの影響によりオンライン開催を予定しており、旅費はかからないため、今回発生した繰越額に関しては、学会報告、および博士論文執筆に必要な関係文献、および関係資史料の購入を中心に使用する。

  • Research Products

    (2 results)

All 2020

All Presentation (2 results)

  • [Presentation] 生徒の懲戒方法の効果と意義に関する言説の歴史研究 ―明治期「学校管理法書」中の罰に着目して―2020

    • Author(s)
      水谷智彦
    • Organizer
      日本教育学会第79回大会
  • [Presentation] 校則がもつ意味とその社会的役割の考察ー明治期の学校管理論に着目してー2020

    • Author(s)
      水谷智彦
    • Organizer
      日本教育社会学会第72回大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi