2019 Fiscal Year Research-status Report
就学前の子育ての費用負担をめぐる政策議論と親の認識に関する研究
Project/Area Number |
19K14149
|
Research Institution | Kawaguchi Junior College |
Principal Investigator |
清水 美紀 川口短期大学, その他部局等, 講師 (10838387)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 無償化 / 子育て / 公費負担 / 保育・幼児教育政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ではとりわけ、幼児教育・保育の無償化議論をはじめとし、就学前の子育てをめぐる費用負担に関する動向が変化してきている。これを受けて本研究では、現在子育てにおける公的役割がどのように捉えられているのかという点を、就学前の子育ての費用負担に関する議論に注目することで明らかにしようとしている。 今年度(2019年度)は主に、幼児教育の無償化に関する政策議論の通時的変化について分析をおこなった。分析対象を2006年「経済財政改革の基本方針2006」以降の閣議決定の内容と関連する検討会、審議会の議事記録とし、資料収集と言説分析を実施した。分析にあたっては第一には、幼児教育の無償化に関する議論では、どの範囲が無償化の対象として扱われ、他方で、どの範囲が無償化の対象として扱われないのかを追尾した。第二には、幼児教育の無償化議論において、どのようなロジックから、費用負担の必要性が説明されてきたかという点を明らかにした。 分析の結果、幼児教育・保育の無償化の必要性を説明するためのロジックは変遷してきたことが分かった。通時的に根底にあるのは、「少子化対策としての無償化」というロジックであり、その対策こそが継続して議論されてきたといえるが、議論の内実を分析してみれば、「社会保障」から「人づくり」へと、移り変わってきたと言える。 上記の知見は、社会において子育て、幼児期がどのように理解され、扱われようとしているのかという点を考察するうえで重要である。 さらに次年度以降には、無償化を実装に移すにあたって、なぜ「人づくり革命」というロジックが要請されたのかという点により接近してみたい。具体的には、無償化議論が「人づくり」のロジックへと転換したプロセスを、経済財政諮問会議や教育再生会議等における記録から分析する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね当初の研究計画に沿いながら、資料の収集をはじめとし、言説分析を進めることができた。また、幼児教育無償化の議論を分析するにあたり、教育政策分野、とくに近年の教育政策決定システムに関する文献研究もおこなった。 そしてこれらの成果の一部を、国際学会(世界教育学会)での報告としてまとめることができた点も、今年度の成果と言えるだろう。学会での報告を通し、諸外国における保育・幼児教育政策に対する注目の高まりと今後比較研究として展開していく必要性がうかがえた。次年度以降も着実に研究を進め、学会誌等への論文投稿を目指したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
当面の課題は、幼児教育無償化議論の分析を継続しておこなうことである。とくに、今年度の研究成果から、同時期の経済財政諮問会議や教育再生会議、教育再生実行会議等の議事記録にも着目し分析する必要があることが示されたので、次年度にはこれに着手する。 加えて、政策への「選好」に関する親調査を行うことも視野に入れ、文献研究のほか、インタビュー調査の設計や協力者の選定を順次進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
今年度は資料収集や研究成果発表のための学会開催が関東圏に集中しており、当初予定していたよりも出張旅費が嵩まなかったため、次年度使用額が多少発生した。次年度は、出張旅費のほか、資料収集・保管のための機材(スキャナー)等のために使用する予定である。
|