2020 Fiscal Year Research-status Report
養育者の絵本選択と子どもとのやりとりに関する実証的研究
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19K14180
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
齋藤 有 聖徳大学, 児童学部, 講師 (60732352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 養育者 / 絵本選択 / 絵本選択の規定因 / クラスタ分析 / 絵本選択と読みの関連 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一子が就学未満で1年以内に絵本購入経験のある養育者1000名を対象とした既存データを分析した。購入絵本の選択理由から【A】子どもにせがまれて仕方なく【B】子どもの興味・発達・生活への合致【C】課題克服・教育目標【D】絵本自体の魅力【E】話題・評判【F】なんとなく【G】その他を抽出し、クラスタ分析で5つのクラスタを得た。第1クラスタ(227名)は【B】、第2クラスタ(136名)は【C】、第3クラスタ(293名)は【A】【F】【G】、第4クラスタ(218名)は【D】、第5クラスタ(126名)は【E】で特徴づけられた。 また、第1、第4クラスタは母親、第3クラスタは父親に多いことから、母親は子どもの興味・発達・生活への合致や、絵本自体の魅力に基づく絵本選択を行うのに対し、父親は積極的な選択を行わないことが推察された。また、母親でのみクラスタ間に子どもの月齢差があり、第5より第1、第4クラスタで、第2、第4より第3クラスタで、子どもの月齢が有意に高かったことから、絵本選択を積極的に行う母親では、話題・評判に基づく絵本選択から子どもの興味・発達・生活への合致や絵本自体の魅力に基づく絵本選択へ、また、子どもの生活上の課題克服や教育目標に基づく絵本選択や絵本自体の魅力に基づく絵本選択から、なんとなくでの絵本選択へと発達的に変化する可能性も推察された。 さらに、母親でのみ、購入絵本の読みの頻度は第3、第5より第1クラスタで多く、子どもの購入絵本への好意度は第5より第1クラスタ、大人の購入絵本への好意度は、第3より第1、第4クラスタで高かった。これより、母親が、話題・評判に基づいて選択した絵本や、なんとなく選択した絵本よりも、子どもの興味・発達・生活に合致しているかどうかに基づいて選択した絵本において、その後、より質の高いやりとりが行われることが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、既存データを用いて、本研究の目的に合わせた分析、検討は行ったものの、コロナ禍により、乳幼児とその養育者を対象とした面接・観察調査の見通しが立たず、新規のデータ収集ができなかったため、当初の計画から大きく遅れてしまっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
面接・観察調査が実施できていないため、web上での質問紙調査によって読みの質まで探れるよう計画を変更する予定である。具体的には、第一子が未就学児で、かつ、絵本選択経験のある養育者を対象としたweb上での質問紙調査において、【絵本選択の質】として①絵本選択の観点(子どもの興味・発達・生活への合致、課題克服・教育目標、絵本自体の魅力、話題・評判、なんとなく)、②絵本の入手方法(本屋や図書館等で中身を見て、インターネット等で中は見ずに)、【絵本選択の規定因】として①絵本の活用状況(読みの頻度)、②親子のコミュニケーション蓄積年数(子どもの年齢)、③絵本選択や絵本読みに対する負担感、④日常の育児に対する効力感、⑤子どもの数、⑥子どもの性別、⑦子どもの気質、そして、【絵本を介したやりとりの質】についても、①絵本に対する子どもの行動(絵本に関連した発話・行動をする、絵本に無関連な発話・行動で集中していない、絵本を読んで欲しいとせがむなど)、②絵本に対する養育者の行動(絵本に書かれた文字を間違えないように読む、子どものめくったページを読む、子どもの様子を意識しながら読むなど)を調査し、それらの関連を明らかにする予定である。また、本研究計画で【絵本を介したやりとりの質】に関する観察データの収集は重要な部分であるため、少数事例でも、【絵本選択の質】に関する面接調査を行うとともに、その子どもとの絵本の読み合い場面を録画記録し、【絵本を介したやりとりの質】についてデータ収集することで、【絵本選択の質】と【絵本を介したやりとりの質】との関連について検討することも試みたい。
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Causes of Carryover |
データ収集が難しかったため。本年度も、既存データの分析に一部経費を使用したが、次年度は新規のweb調査および面接、観察調査の実施を行って経費の大半を使用する。
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Research Products
(1 results)