2020 Fiscal Year Research-status Report
4歳児積み木場面における積み木の操作と物語生成に関する検討
Project/Area Number |
19K14183
|
Research Institution | Shiraume Gakuen University |
Principal Investigator |
宮田 まり子 白梅学園大学, 子ども学部, 准教授 (50350343)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 4歳児 / 積み木 / 物語生成 / 媒介物 / 遊び |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,園における4歳児の積み木場面に着目し,そこで行われる相互行為を明らかにすることである。研究初年度では,中型木製積み木を有する幼稚園4歳児クラスにおいて,合計70時間の参与観察調査を行っている。結果,①他児と積み木を構築させていく繰り返しの中で葛藤と調整が行われていくこと②葛藤と調整の媒介に積み木の存在は欠かせないが,積み木が単純な形体であるため,イメージを補う素材を持ち込む必要が生じること③中型積み木の操作は4歳児後半には一人で行えるものの,保育室内での占有率の高さから他児の目に触れやすく,デザインの模倣によるイメージの伝達が生じやすいことの3点を認めている。また,本研究では,4歳児積み木場面における保育者の役割についても検討を行っている。その結果,積み木場面における保育者の役割は,安全管理に関わる積み木の操作から子ども同士の相互行為に対する介入へと時期によって異なっている可能性を確認している。 研究2年目では上記結果に基づき、4歳児積み木場面において観察された葛藤と自己調整に関する検討を行っている。葛藤場面の解消において、自己調整能力の育ちは不可欠である。ただし、遊び場面では自己調整能力の育ちだけが解消に関与する因子となるのではない。遊びが持つ魅力そのものが葛藤等の課題の解消と関係する過程は、様々な実証的な研究によっても示されている。 本研究ではその遊び手が感じる遊びの魅力の一つとして、物語生成に着目している。4歳児積み木場面では、場面の展開を支える象徴的な物が積み木の場に持ち込まれることを必要とした展開が多く見られている。そこで、物語生成と媒介物に関する先行研究を概観し、園における4歳児の育ちと遊び場面における物語生成との関係、園における育ちを援助するものとしての積み木という媒介物の固有性に着目した発展的な検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の観察結果を基に、研究2年目においても観察調査を継続し、4歳児積み木場面の過程を記録しつつ、先行研究を基に分析を行っていく予定でいた。しかし、新型コロナウィルス感染症対策として観察調査の中断が余儀なくされたことから、初年度の記録を基に、改めて先行研究を概観し、それらを参照しつつ、視点と分析の見直しを行っている。 対面での調査を前提とする本研究の継続において、この2年目は、環境として危機的な状況であった。しかしこの間、保育現場における変化として、ICTを含むメディアの多様性と効果検証への関心の高まりがあった。また、子どもの主体的な保育を目的とする志向性の変化から、園における子どもの行為を物語として読み取られる機会の増加は益々みられている。よって当初の研究計画のうち、調査方法を変更し、本研究目的に基づいて研究を継続することとした。 近年では、幼児の物語行為に対するデジタルコンテンツの開発と検討に関する知見も多く出されており、そうした知見との比較なども加え、さらに積み木の固有性を検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度となる今年度も、園での観察調査再開の見通しは無い。しかし、関連の文献は多く収集されている。よって今年度は、まずは得られた知見を概観し、それらを参照しつつ、これまでに得られたデータの分析の見直しと新たな解析を行うなどして結果をまとめていきたい。そして結果を三つの方法で示していきたい。一つは国内学会での発表及び論文の投稿である。4歳児の物語生成と媒介物との関係について、結果を提示していきたい。二つ目は実践者に向けた書籍の公刊である。園における環境の設定及び遊びを援助するための視点を示していきたい。三つめは国際学会での発表である。幼児の物語生成と具体的操作との関係について、デジタルメディアとの差異を示していきたい。また積み木場面においても発生する保育者の援助方法なども、社会文化的側面から話題にしていきたい。
|
Causes of Carryover |
前年度はヨーロッパ幼児教育学会(於:クロアチア)での発表を予定しており、それに係る経費を計上していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の発生により、学会は開催されなかった。よって予算執行が無くなっている。また、感染症への対策から、研究の方法も変更を余儀なくされたことで、図書購入の予定と別の発表機会の検討等、研究計画の一部も変更している。よって、前年度に作成し直した計画での予算執行を今年度に予定している。
|