2019 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症児における「他者との同期」現象の定量化
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19K14189
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Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
井崎 基博 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (60780210)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 視線行動 / 敏感性 / アイトラッカー |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者はこれまでの研究で、模擬的なコミュニケーション場面において、ASD児では対話者との視線の同期が起こりにくいことを明らかにしてきた。しかし、残された課題として、①模擬的な場面ではなく実際のコミュニケーション場面における「視線の同期の困難さ」の定量化や、②コミュニケーションをする相手との関係性が同期に与える影響があげられる。2019年度は、様々な対人コミュニケーション場面における上記①・②に関する計測を通して、ASD児の「他者との同期の困難さ」を実証した。 ① 実際のコミュニケーション場面におけるASD児の視線の計測 ウェアラブル型アイトラッカーを用いて親子の会話場面におけるASD児の視線の特徴を明らかにした。研究参加者は小学1年生のASD児とその親6組、定型発達(TD)児とその親10組である。静かな個室で、1組の親子が対面で座り、「好きな遊び」「学校での楽しいこと」という2つのテーマについて3分間会話を行う。ASD群とTD群の間で会話中に親の顔を見た総時間に有意な差は認められなかった。1回あたりの停留時間はTD群よりもASD群のほうが短かった。総時間に有意な差は認められなかったが、標準偏差値は両群で異なり、ASD群は親の顔を見た時間が0の児もいた。本実験の計測場所は背景に物が少ない環境だったので、ASD児は親の顔に視線をある程度の時間停留させたのかもしれない。 ② 共同作業場面での親の発話の特徴と子どもが親に向ける視線の関係 親子での共同作業課題の遂行を行動観察し、コーディング表に基づき親の言語行動の特徴を明らかにした。群間で親の言語行動に有意な差は認められなかった。しかし、ASD群でもTD群でも親の敏感性や「指示的」「反応的」な言語行動と子どもの視線行動には関係があった。今後サンプル数を増やし、仮説を検証したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月に実験を行う予定にしていたが、新型コロナウィルスの感染拡大のため大学の実験室で研究の協力をいただくことが不可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施した実験を継続して行う。さらに、本研究は、ASD児にとって同期しやすいコミュニケーション場面の特定をおこなうことが目的であった。そこで、コミュニケーション場面として会話場面だけでなく、絵本の読み聞かせ場面や楽器の演奏場面を設定し、それぞれの場面での子どもの視線行動を計測する。絵本の読み聞かせ場面では、朗読者が絵本を読み、ASD児がその語りを聞いている場面で、視線の追従(朗読者が絵本の特定の箇所に目を向けた時、ASD児が朗読者と同じ箇所を見る)の回数や朗読者を見た時間を計測する。楽器の演奏場面では、児と合奏者が児のよく知っている曲を太鼓玩具で演奏する。曲における休止後の演奏開始部でのアイコンタクトの回数や合奏者の目を見た時間を計測する。 ただし、新型コロナウィルスの感染状況(小学校の再開なども含めて)や対応策をふまえて、研究参加者の不利益とならないよう慎重に判断する。
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Causes of Carryover |
学会発表や研究打ち合わせのための旅費を計上していたが、新型コロナウィルス流行のため学会会場に参集することができなかったり、研究参加者の通所する施設に訪問することできなかったので旅費を予定したほど使用しなかった。 そこで、2019年度に実施できなかった研究打ち合わせを今年度(新型コロナウィルスの感染状況を鑑み、移動の制限が解かれた時期)に行い、予算を執行する。
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Research Products
(3 results)